鞄を持って部屋を出る時
一言だけユウに言った。
「ユウの気持ちはもう決まっている?」
「ああ」
「どういうふうに?」
「アンタに答える義理は無い」
ずるい・・・と思った。
ここで私がゴメンナサイといえばまた同じなのだ。
言える訳が無い。
私は別れると決めたのだもの。
無言で部屋を出た。
いつもなら何度もかかって来る携帯も
メールさえも
その夜はなかった。
私が向った先・・・・・
それは数年前まで住んでいたマンション。
そこには愛する息子と娘がいる。
私の実の子供達。
とにかく子供達に会いたかった。
でも
前夫と新しい奥様・・・・
彼らの許可を取らなくてはならない。
事情を話して
家に上げてもらった。
奥様は部屋に引きこもって一度も現れなかった・・・当然だ。
申し訳なかったけれど
もう私にはいくところもなく、お金も無いのだ。
その日は前夫に話を聞いてもらって
当面は会社の寮にでも入れてもらって
その後、岡山の実家に帰ることに決めた。
不思議とそれがベストな選択なんだと。
一度決めると私の気持ちはすーーっと落ち着いて
進むべき道が見えてきた。
そう、
私は一度本当に決めてしまうと
そこからは早足で進むことが出来るのだ。
この家を出た時と同じように。
子供達は驚いていたけれど
彼らももう中学生。
私と離れて暮らす間に
もう新しい環境に馴染んでいて
お母さんと会えなくなるわけじゃないし
離れていても親子の絆は切れないし
・・・と、
そして息子は
「お母さんも男運ないよね」と笑った。
その夜は久しぶりに息子と娘と一緒に眠った。
幸せだった。
でも、ここはもう私の居場所ではないのだ。
いつまでも甘えていられない。
朝。コーヒーだけ飲んで
また連絡するから・・・と、昔の家を後にした。
荷物をまとめて出て行くために
ユウのもとに向った。