決めていた。

「今度暴力を振るわれたら出て行こう」と。



彼は13日~17日までお盆休み。

13日の夕方から14日のお昼くらいまで

船で釣りに行くということを

とてもとても楽しみにしていた。

それは良くわかっていた。


休みも無く大変なお仕事の

それでもやっとの休日。


行きたくても行けなかった大好きな船釣り。


私は14日だけお休みを取り

13日、仕事から帰ったら

お弁当をつくり、ケイちゃんの着替えやら

みんなの飲物を準備したり

そしてみんなでノリノリでマリーナに向った。


でも・・・

嫌な予感はもうこの時からしていた。


まず、朝一でいつも身に着けているネックレスのチェーンが切れた。

船だから、船酔いするのは目に見えていた。

私の動作がとろいから叱られるってわかってた。


そう、私は釣りも船も嫌い。

ユウの趣味だから付き合っているだけのこと。


案の定

船がマリーナを出てから物の数分で気持ちが悪くなってきた。


朝は「しんどかったらずっと寝てていいからね」と言っていたユウなのに


「なんだその顔は」


と、いきなり睨みつけてきた。


それでも少し休んだら動けるようになったので

私も竿を出した。

でもやっぱり電動リールとか

今回新しく取り付けたロッドホルダーなんかは

扱いがわからなくておろおろした。

「使い方を教えてください」

そういっても無視られた。


ますます気分が悪くなってきた。



私も悪かった、気分が悪いのだったら船の中で休んでいればよかったのだ。

なのに中途半端に参加したから。



鈍いだの

つまらなそうな顔しているだの

返事をしないだの

やる気がないだの


いろんなことで罵倒された。



そして極めつけ。


買ったばかりのアンカー(イカリ)につけているチェーンの向きが反対だった。

それは私がネットで購入し、チェーンは私が釣具屋さんに買いに行って

店の方にわざわざ頼んでつけてもらったもの。


でも、それが逆についていた。



私にはわからない。だってそんな知識は0だから。

だったら最初から自分が用意すればよかったじゃん、

雑用は知識の無い私にさせて・・・

店の人(プロ)がしたのだから間違いないと思うじゃない!!


だからこう言ってしまった・・・





「だって私はわからないし、覚える気も無いし!」





ユウの怒りは頂点に達した。




まず、もっていたアンカーとチェーンを次々に海に投げ捨てた。

一度も使ってない新品。

1万以上もするものを・・・


そしてクーラーボックスも、バケツも、ありとあらゆる小物類も

次々に海に投げ捨てた。

私が作ったお弁当も・・・・。



そして、まだ怒りが収まらないユウは


私に向って来た。



気が付けば顔面を殴られていた。



次に腕を思いっきりねじりあげられていた。



私は「いやーーーーーいやーーーー」と

物凄い声で抵抗して

船のデッキの隅にへたりこんで身を丸くして自分自身を守るのに精一杯だった。




ケイちゃんも泣き叫んでいた。

「おとうさんやめてやめて」と。



ユウはケイちゃんに

「俺の怒りがわかるか?

お前はこの気持ちを収められるのか?」と・・・でも、

そして、

「お前は大丈夫だ、お前だけには何もしないから」と。


そしてケイちゃんを船の中に入れると

反転して棒を持って私に向って来た。




海の上、狭い船の上・・・逃げ場なんてどこにもない。




「もうお前とはこれで終わりだ!船ももう要らない

俺はケイと二人で生きていく!お前がすべてぶち壊したんだ!!!」




「わかった、もう無理、別れる、こんな暴力振るう人となんて暮らせない・・・

こっちにこないで、いやーーーー殺されるーーーー」




私はもう叫びまくっていた。

怖くて怖くて本当にこのまま海に落とされるのかと思った。



目の前に立っているのは人間じゃなかった。




鬼・・・だった。




髪の毛を掴まれそのまま振り回され

また顔面を殴られた。