たき火の脳科学

 

 今回は焚き火の効果を脳科学の視点から大学で研究された成果を紹介させて頂きます。

 読売新聞オンラインより転載させて頂きます。
 「人はなぜたき火にひかれるか」…キャンプ好き脳科学者が体当たり検証、癒やしや脳覚醒を確認し書籍化 2024/05/08 23:56
 人はなぜたき火にひかれるのか――。キャンプを愛好する九州大の脳科学者が、たき火が脳に与える影響を科学的に検証したユニークな本を出版した。キャンパス内で炎を眺めながら、自らを実験台にデータを解析。たき火に癒やしだけでなく、脳を覚醒させる効果もあることを導き出した。「たき火が思索を促すことを示した世界初の研究」としている。(江口朋美)

 <頭部に電極を付け、たき火を見ながら心理状況を記録している実験の様子(岡本准教授提供、画像は省略)>
 出版したのは、九州大基幹教育院准教授の岡本剛さん(48)(システム神経科学)。2022年4~6月と10~12月、福岡市西区の九大キャンパス内で計14回、実験した。
 自分の頭に19個の電極を付けて脳波を測定。「眠気」「リラックス」「疲労感」などの心理状態や、「炎の大きさ」「匂い」「音」といった環境評価の合計19項目を、5分おきに3~7段階で紙に記録した。1回当たり32分間行い、たき火がある場合とない場合を比較した。

◆たき火の効果や魅力について語る岡本准教授
 その結果、脳波では脳が活発な状態にある時に小さくなる「アルファ波」の低下を観測。心理面ではリラックス感や快適感が上がり、眠気や疲労感が下がったことを確認した。気温や風速、体感温度なども含めて分析し、たき火は考え事をするのに向いていると結論づけた。

 岡本さんは「炎の暖かさや揺らぎに安心感を覚える一方、大きな炎や火の粉、冬の寒さは緊張感を伴う。これらが重なり、癒やされつつも頭がさえる状態になるのでは」と考察する。

 脳科学の分野でエアコンの風の快適性やにおいに関する研究に取り組んできた岡本さん。新型コロナウイルス禍でアウトドア人気が高まる中、お笑い芸人・ヒロシさんのソロキャンプ動画を見て、キャンプにはまりだした。

 キャンプでたき火を楽しむうち、「人はなぜたき火にひかれるかを脳科学的に調べたい」と思うようになった。ただ、研究資金の確保は難航。キャンパス内での実験許可を大学から得たり、福岡市消防局などに注意点を確認したりするのに1年かかった。対象実験のため、冬場にたき火がない中、30分以上じっと座り続けると寒さで手足がかじかんだ。

 今回の実験について、脳波解析に詳しい佐賀大理工学部の杉剛直教授(生体医工学)は「1人分のデータということは差し引かないといけない」としながらも、「実験手法やデータの取り方、解析方法がしっかり吟味されている。結果も納得できる、非常におもしろい研究」と評価する。

 ヒロシさんも本の帯に推薦文を寄せた。岡本さんは「たき火が好きな人、脳科学に興味がある学生など幅広い層に読んでもらえれば。たき火の効果を生かした交流の場づくりにも取り組みたい」と構想を膨らませる。

 「 焚た き火の脳科学 ヒトはなぜ焚き火にハマるのか」(九州大学出版会)は四六判248ページ、税別1600円。                     以上