心を整える
 心を整えることは、安らかな気持ちになれることに繋がるようにも思います。そういう点で心を整えることは、「ゆらぎ」がある環境と関連性があるようにも思います。
 心を整えることと、本ブログのテーマである「ゆらぎ」との関連性なども考えながら、今回は、<美感遊創 サントリーウエルネス通信>第二百四十九号 令和五年六月一日発行の「みずみずしく、豊かに――心を整える」を転載させて頂きます。

 みずみずしく、豊かに――心を整える 
 今月は、いつでも晴れやかな気持ちで過ごすヒントとして、自分でできる心の整え方をご紹介いたします。教えてくださるのは、禅僧で精神科医の川野 泰周さん。
 人は無意識にいろいろなことを考え、時にはイライラやモヤモヤを抱えてしまうことがありますが、日常を過ごしながら心をスッキリと切り替えられる方法があるそうです。

◆自分が何を感じ、何を思っているか。
 “気づき”が心を軽くする

 日々、生活しながら絶え間なく変化する心。“雨の日は気分が優れない”など、天気によって左右されることもあるのではないでしょうか。
 「気圧の変化を受けやすい今の季節は、自律神経が乱れてしまうことがありますね。そういった体の不調のほか、考えなければいけないことが多くて脳が疲労し、イライラやモヤモヤを抱えるなど、私たちの心が乱れる要因は様々です。
 でも、心が乱れるのは、決して悪いことではありません。人間は機嫌の良い時も悪い時もあるのが自然なことですから。大切なのは、あるがままの自分の状態に気づき、それを受け入れることなんです。“今、機嫌が悪いな”“ちょっと疲れているな”と。すると心が軽くなり、“じゃあひと息入れようか”と切り替えるきっかけになります」
 自分が何を感じ、何を思っているのか、心を観察する意識が大切かもしれません。
 「人生の主人公は自分自身。主体性をもって生きることこそが、充実した人生の秘訣だと私は考えています。今日は一つでも自分の意志をもって行動できたかなど、日々チェックするのは、とても大切なことだと思います」  
     ほかの誰でもない 
           自分の心を深く見る

監修/川野 泰周(かわの たいしゅう)さん
臨済宗建長寺派林香寺 第19代住職 精神科・心療内科医
1980年横浜市生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修後、精神科医として診療に従事。その一方で2011年より禅修行、14年より林香寺の住職も務める。『ぷち瞑想習慣 思いついたら始められる心の切り替え方』(清流出版)など著書多数。
オフィシャルサイト https://thkawano.wordpress.com

◆日常の動作を丁寧に行うと、心が整っていく
   見る、聞く、触る…感覚を丁寧に味わう

 今の心の状態に自分で気づいて切り替える。主体性を芽生えさせることは日常の中で簡単にできるそうです。
 「それが日常の動作を丁寧に行うことなんです。例えばお茶を飲む際にも、器の感触や手に伝わる温度、色、香り、味…一つひとつのことに集中すると五感が繊細になり、無意識にお茶を飲むのとは違って、“いい香りだな”とか、“ちょっと渋い味が好きなんだ”など、いろいろな気づきを得られるのではないでしょうか。私はこれを“ぷち瞑想”と言っていますが、目の前のことに集中し、動作を丁寧に行うことは、瞑想して心を整えることと同じなんです。
 

 部屋の中を歩く時に足の動きや感触に注意する、顔を洗う時に泡のきめ細かさを感じるなど、なんでもぷち瞑想になります。私は仕事の合間に長めの深呼吸をするのですが、吸って吐く時の感覚を味わうだけでも心が整います。そうすると気持ちを切り替えて次の仕事に向き合えるんですね」
 この時季に楽しみたいぷち瞑想もあるそうです。
 「私は雨の日が好きで、気づきの宝庫だと思っています。窓越しの雨音や、雫(しずく)が葉に当たった時のはじけるような揺らぎ。庭の隅にだんだんと出来上がる小川。晴れの日には見られない様々な動きに気づくと、雨の日が楽しくなってきます」

お茶を飲む写真の解説(写真は省略)
 一つひとつの動作に集中し、その時の感覚や感情を確かめるのがぷち瞑想。雑念が出てきても否定せず、再び動作に意識を向ける。

◆物事を“あるがまま”に見て、どこにいても幸せに
 ぷち瞑想を暮らしに取り入れることで心が整い、幸せを感じやすくなっていくそうです。
 「日々の行動一つひとつをぷち瞑想でいっぱいにし、自分と向き合うことを積み重ねていくと、物事をあるがままに見る心が育まれていきます。そうするとそれまで気づくことのできなかった季節の移ろい、職人さんが丹精込めてつくった造形美など、いろいろなものの美しさに気づけるようになるんですね。あらゆることに美がある、それを見つけるのが楽しいという心が育っていけば、どんな場所にいても幸せを感じられるのではないでしょうか。心の声を聞き、耳を傾ける。そうして自分を慈しむことで心が整い、物事の見え方や心の在り方が変わってくるんですね」
 幸せは、自分の心が決めるものなのかもしれません。心の中をこまやかに見つめて整えて、自分を大切にしてーーみずみずしく豊かな気持ちを抱いて生きていきたいですね。            以上