ー遊びの精神② 柔軟な心構えー
【結果分からない状況 楽しむ】
《現代の日本は遊びの精神をなくしかけていると感じるという。社会全体の停滞感や閉塞感への影響も少なくないとみる》
ゲームが面白いのは勝ったり負けたりするからで、勝ってばかりや負けてばかりでは飽きてしまいます。遊びの精神とは、結果がどう転ぶか分からない、不安定な状況を楽しむこととも言えます。
その精神の対極と思える一例が、産業界でしょう。日本企業は、新たなニーズに合わせて製品を出しても当たるかどうか分からないとして、実績のあるものに改良を加える傾向が指摘されてきました。
IT社会の進展が、遊びの精神の欠如に影響している側面がありそうです。行動に必要な情報が簡単に入手できるようになり、失敗を極度に恐れるようになった。失敗を通して得られる経験や発想の転換の機会も失われています。
ただ、遊びの精神がなくなることはない。今や飲食店を探すのにグルメサイトを検索するのが当たり前で、街を歩き、「この店はどうだろう」と迷う面白さはありませんが、最近の学生は、例えば失恋した時に行く店を選ぶ際、「レストラン 失恋」などと検索して楽しんでいる。情報化で遊びの余地が減っても、別の方法で遊びを追求する人間の本質が垣間見えます。
《人生100年時代も見据え、遊びの精神を呼び覚ますにはどうしたらいいか。心の持ち方を変えようなどと唱えるだけでは、掛け声倒れに終わりそうだ》
生活に小さな遊びを取り入れるのはどうでしょう。例えば、その日に履く靴をコイントスなどで決めてみるのです。服と合わさず、「センスが悪い」と言われても、自分の中で笑っていられれば違った時間になります。
小さな子どもと遊んでみても、教えられることは多いはずです。例えば、ブロック遊びをすると、大人はつい組み立て図通りに作ろうとします。仕事のように遊んでしまうのです。ところが、子どもは何となく組み合わせていき、船の形に似てきたら船にしようとする。うまくいくかいかないかわからない不安定な状況も苦にしない。
遊びの精神はシニア期にも大事になると思います。どう遊ぼうかと考えることは、面白く豊かなシニア期を生きることにつながるはずです。
(聞き手・西内高志)
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*<聞き手から> 松田さんによると、高度経済成長期を経た1970~80年代に、遊びがマスコミなどで注目を集めたが、その後、尻すぼみになったという。コロナ禍でキャンプなどのアウトドアが人気を集める今こそ、遊びの精神を見直す好機かもしれない。「働き方改革」だけでなく、「遊び方改革」もぜひ進めたい。 以上