遊びの精神 柔軟な心構え
 今回掲載させてもらうお話の中にあるように、「遊びの精神とは、結果がどう転ぶか分からない、不安定な状況を楽しむこと」とも言えます。「その精神の対極と思える一例が、産業界でしょう」とあります。
 安らぎを与えてくれる「ゆらぎ」には、不規則性や不確実性などもその要素として含まれていると思います。そういう意味で「遊び」の中には「ゆらぎ」の要素が大いに含まれているのではないかと考えています。
 では<今を語る ―遊びの精神 柔軟な心構えー 筆者:松田恵示さん【東京学芸大副学長】>という新聞記事<読売新聞、令和3年(2021年)12月28日付>を転載させて頂きます。2回に分けて掲載します。

  日本社会を停滞感が覆い、長引くコロナ禍で先行きも見通せない。閉塞感(へいそくかん)がある時代だからこそ、柔軟な心の持ちようが求められていないか。遊びの精神に生活のヒントを探る「遊び学」を提案する、東京学芸大副学長の松田恵示さんに聞く。

<今を語る>
  ー遊びの精神 柔軟な心構え①ー
  大人は、遊びを不真面目とかいいかげんといったニュアンスを含むものとして捉えがちです。しかし、20世紀を代表する歴史学者ヨハン・ホイジンガは、1938年の著書「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)で、人間の活動の本質は遊びであり、遊ぶことで文化が出来てきたと論じました。
 遊びに特有の心の働き、いわば、遊びの精神を通して人や社会を見ると、違った理解ができ、心豊かになるのではないか。そんな考えから、「遊び学」を提案しています。

《コロナ禍は、ほぼ2年がたとうとする今も先行きが不透明だ。気候変動などの影響で毎年のように発生する災害への不安も影を落とす》

 今の時代、あえて遊びの精神が持つ特性を知ることは意味があるのではないでしょうか。例えば、複眼性。物事を複数の視点から見たり考えたりする特性です。
  小さな子どもが泥ダンゴでごっこ遊びをする時、「はい、おやつ」と手渡されて食べれば、大変なことになる。かといって、「これ、泥ダンゴじゃん」と言ってしまうと面白くない。遊びにはウソだけれど本当というような両義性があり、子どもはそれを自然に受け入れている。複眼性があるということです。
 日常生活でも、当たり前だと思っていたことが突然、当たり前でなくなる可能性がある。柔軟な心の構えを持っているか否かで、先の見えない時代を生きていく際に大きな違いが出るのではないか。心の余裕と言ってもいいかもしれません。
                                                      
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★社会人に「遊び」が必要と考える理由         
 ○息抜き・リフレッシュできる            79.9%
 ○価値観が広がる                            30.2%
 ○創造性や柔軟性が身につく                9.5%
 ○価値観が深まる                             9.1%
 ○交友関係が広がる                            8.5%
  (※ヤマハ発動機の調査から。上位5項目。複数回答)
 ヤマハ発動機が10月、20~30代の未婚の社会人約550人に行った調査では、9割が社会人の生活に遊びは必要と答えた。理由は「息抜き・リフレッシュできる」「価値観が広がる」などが多かった。

★まつだ・けいじ 1962年、和歌山県生まれ。専門はスポーツ社会学。 遊びや子ども文化などについて、社会意識の観点から研究する。著書 に「『遊び』から考える体育の学習指導」など。                                       ②に続く