秋刀魚の歌 不漁に思うこと | 1級フードアナリスト ユピロ菌の迷える子羊達へ

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悩んでいたときに救ってくれた言葉や料理をおすそ分け。仏教に自分で掛けた首輪は自分でしか外せないという言葉がある。悩みを解決してくれるのは宗教でも他人でもない。自分自身でしか解決できない。

 
 
 
 
昨年10月の出来事の備忘録です
 
 
毎年秋になると
 
札幌でも道庁前などで
 
北海道産の「サンマ祭り」が開催されます
 
例年だとそこで売られているサンマを箱買いして
 
実家や心友に送っていたのですが
 
今シーズンは中止が相次いだ為それが叶いませんでした
 
箱売りに出会わない
 
記録的な不漁が原因です
 
秋刀魚のお刺身が食べたくても
 
あまり口に入らなかったし
 
脂がのって美味しい秋刀魚には殆ど出合えませんでした
 
 
 
 
 
 
 
 
 
手頃な値段で
 
スーパーで売っている時があったので
 
漸く一度だけ購入した時がありました
 
少し話が飛びますが
 
僕は幼少のころからずっとモーツァルト好き
 
その僕がずっと離れられない言葉
 
小林秀雄さんの『モオツァルト・無常という事』の中の
 
「哀しみが疾 走する」という言葉
 
僕は未だにこの言葉に呪縛されている
 
こう小林さんが表現したのはモーツァルトの<弦楽五重奏曲の第 4 番ト短調>
 
この第 4 番は終始曲の根底に物悲しさが漂っていて
 
曲を作った時のモーツァルトの深い哀しみを表している
 
それを小林さんは
 
「モ オツァルト のかなしさは疾走する
 
 涙は追いつけない
 
 涙の裡に玩弄するには美しすぎる
 
 空の青さ や海の匂いの様に
 
 「万葉」の歌人が
 
 その使用法をよく知っていた「かなし」という言 葉の様にかなしい」
 
と表現している
 
さてそれと同様に僕が秋刀魚を食べる時に必ず思い出す歌があります
 
佐藤春夫さんの『秋刀魚の歌』
 
「さんま、さんま
 
 さんま苦いか塩つぱいか。
 
 そが上に熱き涙をしたたらせて…」
 
でもこの歌の背景は結構壮絶なのです
 
佐藤春夫がこの歌を歌った食卓を囲むのは
 
不倫の相手の女性つまり谷崎潤一郎の妻である千代夫人と長女鮎子
 
実は切ない心をうたった詩なのです
 
千代夫人は谷崎潤一郎との夫婦関係が上手くいかないことを
 
夫の親友である佐藤春夫に相談していました
 
谷崎の留守宅を佐藤が訪問した際に食べた秋刀魚なのです
 
で、全文を読んでみますかwww
 
佐藤春夫『秋刀魚の歌』
 
「あはれ
 秋風よ
 情〔こころ〕あらば伝へてよ
 ――男ありて
 今日の夕餉〔ゆふげ〕に ひとり
 さんまを食〔くら〕ひて
 思ひにふける と。

 さんま、さんま
 そが上に青き蜜柑の酸〔す〕をしたたらせて
 さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
 そのならひをあやしみてなつかしみて女は
 いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
 あはれ、人に捨てられんとする人妻と
 妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
 愛うすき父を持ちし女の児〔こ〕は
 小さき箸〔はし〕をあやつりなやみつつ
 父ならぬ男にさんまの腸〔はら〕をくれむと言ふにあらずや。

 あはれ
 秋風よ
 汝〔なれ〕こそは見つらめ
 世のつねならぬかの団欒〔まどゐ〕を。
 いかに
 秋風よ
 いとせめて
 証〔あかし〕せよ かの一ときの団欒ゆめに非〔あら〕ずと。

 あはれ
 秋風よ
 情あらば伝へてよ、
 夫を失はざりし妻と
 父を失はざりし幼児〔おさなご〕とに伝へてよ
 ――男ありて
 今日の夕餉に ひとり
 さんまを食ひて
 涙をながす と。

 さんま、さんま
 さんま苦いか塩つぱいか。
 そが上に熱き涙をしたたらせて
 さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
 あはれ
 げにそは問はまほしくをかし」

 
 
 
 
 
 
 
 
さて会社が借りてくれている
 
札幌のマンションは
 
キッチンも狭くグリルも付いてません
 
もちろん七輪を使える訳でもなく
 
フライパンにアルミをひいて焼きました
 
例年に比べると細いけど
 
やはり旬に食べる秋刀魚は格別です
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この数年不漁だが今年は
 
一段と酷い状況だ
 
近海で獲れず遠洋まで漁に出ており
 
今年は転覆事故まで発生してしまった(>_<)
 
食資源は枯渇するのだと云うことを認識すべき
 
未来の子供達に食資源を残す義務が我々にはある
 
もし金を出せば食べられると思っているとしたら
 
それは「パンがなければブリオッシュを…」
 
マリー・アントワネットと貴方は同じ感覚
 
物事の根っ子を見失っているということだ…
 
未来の子供達へ食資源を残さなければ…
 
マグロ🐟だって和牛だってこのままでは
 
食べられなくなってしまう…
 
食の国内自給率を上げていくことも大切
 
世界人口増加による飢饉は必ず起こる
 
その時輸入に頼ってる我々は何を食べるのか?
 
秋刀魚の不漁は中国や台湾などの
 
外国漁船による乱獲が原因なのでしょうか?
 
それも一理はあるのかもしれません
 
でもそれだけではないのです
 
実は根っ子に地球温暖化による海水温度の上昇にあります
 
日本近海にいた秋刀魚は遠洋に居場所を変えています
 
前述の転覆事故のように日本のサンマ漁は中小船です
 
大型船を使うには費用も時間も大きな壁がある
 
それを乱獲だけに責任を押し付けることは間違いです
 
我々は便利や贅沢になれきっている
 
政府も会社も選挙や利益だけを追っている
 
本当は「論語とそろばん」でなくてはいけない
 
目の前の利益にのために自然を犠牲にしてはいけない
 
それは結果的に自分たちの首を絞めているのだから。。。
 
日々食をとることの出来る幸せを考えてみる
 
そして自分の出来ることはなんなのか考える
 
そんな時間も大切なのではないか…
 
秋刀魚を食べる機会がなかったが
 
尊命敬食…感謝の気持ちで
 
いただきます🍴🙏
 
ご馳走さまでした✨