Masato の続きの小説

 

 

 

 

マサトが渡豪してから5年、16歳になった話。

うん。これは小説だよね?小説じゃないと困る。

Masatoでは結構、現実感のある小説だなと思っていましたが、こちらは自分の実体験からは遠いからか小説として完全に認識しました。

 

アイデンティティクライシスをテーマにしたお話です。

アイデンティティクライシスって帰国子女系の本を読んでいると必ず問題になる話。

 

自分の故郷はどこなのか、自分は何人なのか

 

という問題に直面するそうです。

ですが、自分の故郷は日本、自分は日本人であると疑ったことのない私にはアイデンティティクライシスと聞いてピンとはきていませんでした。

ですが、この本を読んで、確かに私も帰国子女だから周りと違うのかな?と悩んだ過去があったことを思い出しました。しかし、私の場合は幼児期のたった3年、帰国後の小学校に恵まれたこともあり、「まさかね」、「気のせいだよね」で通り過ぎた出来事でした。

でもよく考えるとそれも紙一重だったのかなと思います。

同時期に赴任して、我が家より2年長かった、私より2つ年上のお兄ちゃん。小1から小6まで海外で過ごし、帰国後、帰国子女受験に失敗。公立中学に通うもその後引きこもりになってしまい大変だと聞いたことがあったのも思い出しました。その時、母は、よくあるらしいと言っていたので、

あまり知られていないけど(その会社の口伝え的なことだよね。旦那の会社ではそういう話は聞きませんでした)よくあることなのかもしれません。

正直、私も姉も帰国後の小学校に恵まれたのは、何物にも変えがたいラッキーだったと思います。そういえば母もあの小学校は良かったと何度も言っていました。

 

渡米時期、期間、出会いでいかようにも変わってしまうものなのかもしれません。

 

この本には、親の国と自分の育った国が違う人物がマサトふくめ3人出てきます。

どの子もね悲惨なんですよね。

 

1人はマサトの日本人の友人。日本語教育ばっちりな家庭で育った彼。オーストラリアではもちろん外国人として扱われ育ち、日本に帰国すると日本人からはかけ離れすぎていて日本人とは認めてもらえないと病んで引きこもりに。

 

もう一人は中国人の友人。中国人の家庭は必ずと言っていいほどハイプレシャーをかけられているめちゃくちゃ大変な家庭ですが、その子は文化とのはざまが原因なのか、その他いろいろあったと思うけど自殺してしまいます。

 

そして、その二人の気持ちが痛いほどわかるというマサトの心の葛藤がメインテーマです。

なぜ自分は日本人なのか、なぜ親が日本人なのか

 

いままでピンと来ていなかった、アイデンティティクライシスについて理解が深まったような気がします。

例題を読んでいるようでした。

 

別に海外に行かずとも思春期特有の問題も含んでいるんですよ。

自分が嫌になるみたいなね。それが日本人であること他と違う事で重症化しちゃう感じですよね。それにさらに、過去の日本の起こした戦争が追い打ちをかける的なね。

 

オーストラリアもアメリカも過去に日本軍がやらかしている問題があり、日本の代表としてこの問題に向き合わねばならなくなるんです。これは違う本にも書かれていました。ですが子ども本人からしてみれば、自分はオーストラリアで育っているし、何なら日本人であることを恥じているのに、さらにその複雑な問題まで背負わされていて、気の毒としか思えません。

この戦争問題はね、高学年以上になったらきっちり勉強しておいてよいかもしれません。

 

この小説でもマサトは過去に日本軍が何をやったか何も知らなかったのですが、そういう経験をするんです。でもマサトちゃんと調べないし過去に何があったか理解しようともしないんですよね。いや、調べるんだけど、オーストラリアの図書館で調べるし、反抗期だから親に聞くことしないし、多分日本語苦手だから英語で調べるしさ。多分、マサトは自分がオージーだと思っているからオージー目線で調べるんだけど、それでさらに自分自身を憎んだりするんですよ。

 

時代も進んだので、そういう風に見てくる人は確実に減っては来ているけど、

日本以外の国にいたら自分が日本人だからという理由だけで敵意を向けられたり差別されることはありますよね。

 

日本育ちの大人はさ、なんだかんだ言っても自分は日本人という誇りがあったり、愛国心的なものもあったりするじゃないですか。まぁ、逆立ちしても日本人であることは否定できないし、完全に日本が大嫌いな大人って少ないと思うんですが、子供はそうじゃないんですよね。

日本なんてじいちゃんばぁちゃんが住んでる国でしかない。それどころか日本人であることを隠したいと嫌悪している子すらいると思うんですよね。家の中が日本人っぽいから友達なんて絶対に呼べないとかそいう描写もあったので。

 

 

まぁ、所詮は小説ですが当たらずとも遠からずなんだろうなと思う。

 

当事者の気持ちがわかりやすくて、面白かったです。

 

でも海外で子供育てるって厳しいよねーー。

子どももキツイよねー。

 

マサトは幸せになれるのかなと気になるお話です。

 

 

まぁ、正直、マサトは海外に行ったことよりくそ親父について行ったことが間違いの様な気もするけどね。

結局、あの無責任な父親は駐在終了後、オーストラリアで起業するんだけど、

上手くいかず、マサトを通訳として利用したり、アル中一歩手前まで行ったり、女に現を抜かしたりマサトの面倒は一切見ないんですよ。この父親の存在がこの本を小説らしく感じさせますよね。

なんかの本に書いてあったけど、子供の通訳をあてにするように絶対になってはいけないと書いてあったんだけど、その理由がこの本をよんで理解できるかもと思いました。

 

 

 

そしてね、やっぱり我々は駐在員であるという事を忘れちゃいけないなと思います。(うちはもう違うけどね)

アメリカ時代の大先輩の奥様が、いつ辞令が出て日本に帰らなきゃいけないかわからないんだから、いつでも帰れるように準備しておいた方がいいよと言われたことがあるんです。

会社なんていつ方針変えるかわかりませんからね。

帰国後、インターに通うのは現実的じゃないですからね。

 

マサトも運よく父親の会社が持ちこたえているから帰国しなくていいけど、つぶれたら即帰国だし、学生ビザがうまい具合にとれたとしても、日本のパスポートしかないので就職できるかは別問題なんですよね。

アメリカはその辺厳しいらしいですね。結構な確率で日本で就職先を探さないといけないと聞きます。いまはビザが緩い他の国があるのかはわかりませんが、

 

続編は、マサト大学生みたいなので、就職問題かな。

マサト、絶対に日本で働けないでしょー

 

この本でもちらっと出てくるのですが、

保証人問題や頼る人が少ない問題、国の制度がうまく使えない問題が出てきます。

前に読んだ、TCKの本で、

親が駐在を終えて国に帰国後、子供だけでその国に戻ってきたら、

親の会社のサポートもなく、国籍もなく、頼れる人もなく、思っていたのと違ったと思う子供は多いそうです。