この壁、珪藻土。


この壁の開発者M君は、私の旧くからの友人で、コンサートは欠かさず聴きに来てくれていました。塗る時にコテの動かし方など、身体全体の動きを全神経集中して、それはそれは、真剣に向かいます。

そこから、骨の動きにまで拘り、姿勢、所作など、微細な動きや、人の発する声にまで、気付きを持つ人でした。なので、私の弾く姿勢や、音など、耳というより、心で聴く。私からすると、絶対に嘘や誤魔化しが効かない、会うと緊張も伴うような、ちょっと面白い人でした。


そんなM君と、10年ほど前に、大喧嘩をして、そのままになっていたのです。彼は、東京へ。まだまだ自分の成長を望み、出会う人を求め、挑戦をしたいと。それが、その頃の私には、認められずに、彼が津山を離れると聞いて、電話口で酷い言葉を放ってしまいました。

当然、SNSは全てブロックされてしまい、音信不通に。まあ、もう会うこともないだろうなと。。。


数年前に、今の家に転居することになり、和室や縁側の昔からある砂壁を見た時に、ここを「白い壁」にしたい、とイメージしました。その時に、前から憧れていた珪藻土にしたいなと浮かんだのです。


それを、昨年年明けに、友達に話したら、その友達から「私の妹に言ってみたら?」と。彼女の妹のKちゃんは、DIYが得意で、前出のM君に、壁の塗り方を教えてもらっていたのです。まさか、「師匠」と慕うほどとは、後になって知るのですが…

Kちゃんが、春から、仕事の合間の時間を使って、M君が開発して、更にグレードアップした珪藻土を塗ってくれることになりました。


SNSも、新しくインスタが始まっていたので、そちらのDMから、M君に一応ご挨拶。彼から返って来た返信は、丁寧ではありましたが、他人行儀な「ですます」調で、

「ありがとうございます。またご意見、ご感想などお聞かせください」

ちょっとチクッと胸にきた…


養生テープを貼り、下地を塗り、乾いてから、養生テープを剥がし、また新たに養生テープを貼り、本塗り。


え〜!こんなに手間かかるの?!コテでザーッと塗っているところしかイメージしていない私には、驚くことばかりでした。しかも、自分では目に見えていなかった部分も結構あって、塗る範囲が倍増!


時間がある時には、Kちゃんと、一緒にお昼も食べたりして、ゆっくりした時間を過ごすのも楽しかった。


ある時、Kちゃんが、言ったのです。


「M君は、東京に出る時に、ゆみちゃんに言われたことが一番応えたみたいだったよ。」……


Kちゃん、知ってたんだ。喧嘩したこと。


…あの時のことが、蘇って来る。


正直に、感じたままを言う。でも、言葉を選ぶほど、心に余裕なかった。ただただ、感情的になって、相手の言葉を封じ込めてしまった私。


そして、M君がそれだけ傷ついたことを知った時に、どれだけ友人として、話せる人として、私を、大切に思ってくれていたかが、心に返って来た。



長くなったので、

続きはまた書きます。