夏合宿 | ゆんたの妄想ブログ

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うるさいセミの鳴き声と、水しぶきの音、青年達の声が響きわたる野外プール。

毎年恒例の水泳部夏合宿真っ最中。


高校2年の俺は、今年で二回目の参加になる。

この合宿は他校でも有名な強化合宿で、1週間みっちり鍛えられる、かなりしんどいプログラムだ。幼い頃から水泳をやっていた俺でさえ、去年は毎晩のように爆睡していたほどだ。

そんな強化合宿3日目の晩。


「寝むれねぇ。あ、そうだ。誰か腹パン勝負しようぜ!」


1人の先輩が唐突に提案してきた。

腹パン勝負。最近校内で流行っているちょっとした遊びだ。昼休みや放課後、自慢の腹筋を惜しげもなく晒しながら、お互いに腹を一発づつ殴るといういたってシンプルな勝負。

しかし、シンプルゆえに、その勝負は時に熱く、激しいものになる。昼休みには本気になりすぎて嘔吐したやつなんかもいる。


「はぁ、何言ってんだよ。」

「そうそう、みんな疲れてんだから無理に決まってんだろ~。」

「そうっスよー。オレらもうへとへとで、そんな元気ないっスー。」


と、口々にぼやく部活仲間達。


「なんだよおまえら、鍛え方が足りないんじゃないか??」


そう言って先輩は寝間着替わりのジャージの上着を脱ぎ捨てると、上半身裸になり、筋肉をアピールしてきた。

部内でトップクラスの肉体と言われる先輩の体は全体的に脂肪がのっているが、暑い胸板、脂肪が乗っていても割れている腹筋、太い腕、水泳で鍛えられた背筋と、かなりバランスよく鍛えられている。

また、それを自覚していることもあり、先輩は良くこうやって筋肉自慢をしてくることがあるのだ。

しかし、がっちりした体格、おちゃらけた性格とは違い、そのスマートな泳ぎは部内でもかなり人気だ。かくいう俺もその1人。この人のように泳ぎたい、誰もがそう思っていた。


「おいおい、誰か勝負しようぜ!!これなら目も覚めるし、根性も鍛えられるだろ?」


そう言って先輩はまだ相手を探している。

ほかの先輩いわく、教室でもよく勝負を仕掛けてくるらしい。最近負け無しで、絶好調らしく、退屈しているとのことだ。

確かに鍛えられてるよな、俺ほどじゃねぇけど。

そう、確かに泳ぎではまだかなわないが、筋肉ならオレは先輩に引けを取らない、いや、負けてる気がしない。

俺も部内でもトップクラスの肉体の持ち主だ。クラスでは俺にかなう奴はいない。だから腹パン勝負を自分から仕掛けることはほとんどしないが、よく勝負を持ち込まれることがある。もちろん全員返り討ちにしてるけどな。

とまぁ、そんな事考えてると、俺に目をつけた先輩が勝負を振ってきた。


「うーん、いいっすよ。俺も先輩と勝負してみたいと思ってたんで。」


俺の筋肉が先輩よりすごいと確認するチャンスを、逃すはずがなかった。

俺も先輩同様上を脱ぎ上半身裸になる。

全体的に先輩より絞られてる俺の体。脂肪がない分、俺の方が全体的に薄く見えると思われがちだが、それを補って有り余る筋肉量。

先輩ほどの厚さはないがカチカチの胸板、腹筋はボコボコに六つに割れ深い溝を作っている。腕は先輩と同じくらいだが、俺の方が筋質で張りがある。背筋は同じくらいだろうか。

先輩との体格差はほぼなかった。


「お前の筋肉すげーからさ、1度勝負してみたかったんだよなぁ。ま、俺の方がすげーけどな。」


なんていう先輩。今並んでみても俺の方がすげー筋肉なのは一目瞭然。俺は少し頭に来るも、その場は冷静にやり過ごす。


「先輩程じゃないですよw」

「ま、それほどでもあるけどなw」


先輩はポーズを取り、必死に腹筋を浮かび上がらせてくる。それでも俺には遠くおよばねーけどな。


「やれやれー」

「先輩頑張っす!」

「程々になー」


やる気のなかった奴らも、他人が勝負するならと、急に元気になってきた。もちろん興味なくそのまま寝てる奴らもいるが。


「ハンデやるよ、お前からでいいぜ。」

「じゃあ遠慮なく行かせてもらうっす。」


ギャラリーも増え、やる気満々な先輩はかっこつけたかったのか、挑発してきやがった。この挑発は俺の神経を逆なでするのに十分だった。俺ははじめから8割くらいの力で先輩の腹を殴る。


ドッボッ!!


「おうっ?!う、ふぅ…!!??」


どうやら先輩はほんとにハンデをくれてたらしく、そんなに腹に力を入れてなかったらしい。俺の拳が先輩の腹に少しめり込んだ。


「見たか今の!」

「腹に拳めり込んでたぜ!!」

「ついに黒星つくか~!」

「先輩のパンチスゲー!」

「俺今の耐えられる気しねーわwww」


口々に感想を述べるなか、先輩は予想外のダメージに驚きつつも、1発で終わるわけにも行かず、踏ん張って耐えていた。


「さ、先輩のばんっすよ??」


俺はあえてそれを無視し、腹に力を込め、先輩に差し出す。ボコボコに割れた俺の腹、いつ見ても完璧だぜ。先輩はこの鋼の腹筋破れるかな??


「へ、しっかり腹に力入れとけよ?」


なんとかダメージをやり過ごした先輩。よく見れば全身に汗が浮かんでいる。かなり聞いているようだ。俺は少しがっかりしつつも、先輩のパンチを待つ。


ベチ!


軽い音を立てて俺の腹に当たる先輩の拳。ダメージのせいで力が入らなかったのか、それともこれが本気なのか…。全くダメージのない俺。


「なかなか硬い腹じゃねえか、次は本気で行くぜ。」


先輩は少し驚きつつも、俺におとなしく腹を差し出す。その程度のパンチ、何百発打ち込まれても平気だぜ。俺はもはや勝負にならないと確信し、さっさと終わらせようと考えた。


「んじゃ遠慮なく。」


俺は全身に力を込め腕を思いっきり引く。

全身に血管が浮き出て、腕の筋肉がボコッと盛り上がる。


「おいおいヤベーよ」

「なんだよあの筋肉!!」

「これ終わったんじゃね?」


外野が俺の筋肉に釘付けになるなか、先輩も目を見開き、全身から汗が吹き出ている。俺の本気のパンチ、受けてもらうぜ。歯を食いしばり、必死に腹に力を入れる先輩に対し、ついに俺の拳が襲いかかる。


ドッボォォオオォォォン!!!!


「おぶげぇぇぇえええぇ!!!!!」


俺の拳がまるまる先輩の腹に埋まり、ほんのり汗をかいた先輩の湿った腹に俺の拳が包み込まれた。


「うっわ~こりゃ終わったな~」

「なんすか今の!!マジヤバイっすよ!!」

「エゲツねぇ威力だなおい」


外野がワイワイと喚く中、一番信じられないでいる先輩。目を見開き口を開け、必死に痛みをこらえている。さらに、湿っぽくなる腹から拳を引き抜くと、そのまま赤くなった腹を抱えてうずくまり、悶絶し出す先輩。


「お、俺の、は、腹、がぁ…」

「たった2発で終わりっすか??先輩ならもう少し耐えてくれると思ったんすけどねぇ。残念っす。」


先輩は涙目で、全身に汗を噴出し悶絶している。俺は少しがっかりし、そのまま寝ようと思っていたが。


「先輩、次俺としませんか??」


後輩のひとりが勝負を挑んできた。


「やめとけって、ぜってー勝てねぇって」

「そうそう、やめとけよ~」

「お、さらなる下克上か~」


無駄に盛り上がる外野。今の勝負を見てあえて勝負を挑んでくるんだ。少しは楽しめるかもな。


「いいぜ、その勝負受けて立つ!」


俺はわざとらしくポージングを取り、筋肉を誇示する。外野からはまたも感嘆の声。後輩はそんな中そそくさと上着を脱ぎ捨てる。

俺に比べれば全然細く、厚みもない体。おいおいそんなんで俺に挑むってのか??

薄っぺらい胸板、腹筋は綺麗に六つに割れているが、腕は俺の方が一回り以上太い。俺とやるには鍛え方が全然足りないな。


「お前からでいいぜ」


俺は余裕の表情で腹を差し出す。そんな細腕のパンチ、俺の腹には効かねぇことを教えてやるよ。俺は腹に、あえて半分位の力しかいれなかった。


「じゃあ遠慮なく。俺ははじめから本気で行きますよ?」

「おう、来いや。」


そう言って構えるやつに、どこか得体の知れない力を持ってるように感じ、俺はやつが打ち込む寸前で腹に本気で力を入れた。


ドグッ!!


「んくっ!!」

「な!?」


とっさに力を入れた俺の腹を、やつの拳が少し歪ませる。もし力を入れるのが遅かったらどうなってたか…。


「なかなかいいパンチじゃんか。」


俺はあえて余裕なふうにやつにいう。どうやらパンチにかなりの自信があったようで、かなり動揺しているようだ。ふふ、いいねぇ。その表情たまんねぇよ。さ、俺の番だぜ。その薄っぺらい腹で耐えられるかな。


「おら、腹出せや。」

「う、うっす。」


おずおずと腹を差し出すやつに俺は本気のパンチを即効でぶち込んでやった。


ドッボォォオオオォォォ!!!!!!

グチョ!!!


凄まじい威力で叩き込まれた俺の拳やつ薄っぺらい腹を簡単に貫いて、胃袋を変形させた。目を見開き声にならない声を発しながら、やつは俺のぶっとい腕にしがみつく。俺はめり込んだ拳を引き抜き、やつの肩をぽんと押してやった。

数歩後ずさった後、そのまま尻餅をつき、潰された腹を抱えながらのたうちまわっている。


「やばすぎだろ」

「おいおい、吐いて汚すなよー」

「1発かよーもっと耐えろー」

「いや無理だろ」

「こいつに勝てるヤツうちの部にいねーよ」


実は後輩は空手をやっていたらしく、パンチにはかなり自信があったらしい。なるほど、殴り方を知ってるからあの細腕であれだけの威力が出たわけか。

ま、俺の腹には遠く及ばねえがな。それにやつの腹も全く殴りがいがなかったぜ。空手で鍛えてんならもう少し楽しめたと思うんだけどな。


そしてこのあと、俺の筋肉を触ったり軽く殴ったりと、さんざん触られ殴られ、やっと落ち着いた頃には日付が変わっており、俺らはさっさと寝ることにした。

明日の練習も頑張るかー!