最近、私の実家の近所にあったうどん屋が閉店した。
愛すべき味がまたひとつ消えた。
そのうどん屋は山の頂上にある。
だから私らは何十年も「峠」と呼んでいた。
実際の店名は山本屋とかそんな感じだったと思うけれど。
老夫婦が2人で切り盛りしていた。
まだ私が土にまみれて遊んでいたガキンチョの頃から家族で通いつめており、
私ら3兄弟の細胞の奥の奥にまで味がしみこんでいる。
当然、珠羽も食べた。
姉の子供らも食べた。
紗季も食べるはずだった。
「讃岐うどん」と銘打っているけれど、麺のコシは本場には及ばない。
メニューも当然ご当地に合わせてある。
けれど美味しかった。
何十年もブレない味。
何十年も変わらない器。
何十年も変わらない夫婦・・・。
玉子とじうどんの卵のフワフワは神がかっていた。
とろろ釜揚げの山芋は若干少なめに見えたけれど、ダシを入れると丁度いいんだ。
ころうどんは結構不味かった。
店は汚かった。
タヌキとワシみたいな大きな鳥の剥製があって、
タヌキは、食べ物が無くて山から下りてきたら車に轢かれてしまったのを、
可哀相だからと剥製にしてもらったそうだ。
ワシみたいな大きな鳥の剥製はいつの間にか無くなっていた。
山頂だから、眺めは無駄に良かった。
弟は特にこの峠のうどんを愛しており、
讃岐に遊びに来た時に得意げに数件のうどん屋に連れて行ったけれど、
最終的に「峠のうどん屋の旨さを再認識した」と言い放ち、
殺意を芽生えさせてくれた。
年老いた夫婦だったので、近年は大将の体調次第で営業時間が短かったり、
いきなり休んだりなどがあり、ある程度覚悟はしていた。
閉店の理由はわからないけれど、その老夫婦は街で見かけるらしいので、
体調不良か、経営難か・・・・
息子さんがいるらしいけれど、別の場所でうどん屋を経営しているとかいないとか。
子供の頃家族で一度行った事がある気がするけれど、
結局本家の味にはかなわないということで二度と行かなかったような。
やはり味は受け継がれていないんだろうか。
調査すべし > お姉
何せ、悲しいお知らせである。
まぁサラリーマンならとっくに定年の年なので、
ゆっくり休んで欲しい。
大将、何万本ものうどんをありがとう。
そして忘れないよ。大将が私とお姉を見て、
私に「お姉さん」って言ったこと。
忘れはしまい・・・・・・・・・