星野道夫という写真家が大好きで、彼のエッセイは社会人の時

バッグの中にいつもいれて持ち歩き繰り返し繰り返し読んでいた。

その中によくボブサムさんが登場する。

私はつい1,2年くらい前に初めて観たのだが、

地球交響曲第3にも登場しているので多くの人が知っているみたいだ。


”木は生きている”というテーマでのお話会だった。

木を彫る為のクリンギット族の数千年前から変わらない道具についての説明、

彫刻物の説明や、木を切る際にする儀式について、

お祈りしたり踊ったりして、木にこれから何をするかを説明する、

そして木を眠らせてから木を切るということ。

又その木で家を建てたなら、眠ったままの木を再び起こす儀式、などのお話や、

アイヌや縄文人とクリンギット族との類似性や関連性。

又、クリンギット族には二つの大きなルーツがあり、

それがワタリガラスと熊のクラン、であること、等

どれもたまらなく心惹かれるお話だった。


今は亡き星野さんは、ワタリガラスの神話を求めて旅を始めた第一日目に

ボブサムさんに出会ったのだ。

出会った最初のボブサムさんの一声が

”今日、ワタリガラスの巣をみつけたよ”だったとエッセイに書いてある。

星野さんが亡くなる少し前に長老から与えられたクランは熊で、

ボブサムさんはワタリガラス。

ボブサムさんの今回のお話の最後にワタリガラスのクランの人たちは

船に乗る部族で、海流にのって日本から渡ってきたのでは、というような

お話だった。星野さんはワタリガラスの神話を本に残すことはできなかった、

そして私も、星野さんが生きていたら知ることができたであろうワタリガラスのルーツを

知ることはなかった、、だから、なおさら、

そういった話がボブサムさんから聞けたことがとても嬉しかった。

本当に星川淳さんの小説にしても、ボブサムさんのお話にしても、

多くの人を通して星野さんは生き続けているんだなと思う。


そして歴史上の事実でなく、ボブサムさんのような人から語り継がれていく

神話の持つ力にたまらなく惹かれている。