※この投稿は、当時リアルタイムで書くことが出来なかった事を振り返って書いた文章になります



2020731
 
2時間おきに目が覚めたけれど久しぶりにゆっくり寝た気がした。

1100の退院に向けて、帰宅の準備をしなければならない。
 
流産してしまった今日退院する患者に緊急性は無く、助産師さんも滅多に部屋には来ない。
 
ただ、昨日の夕食後の服薬後に腕と脚、背中に発疹が出てしまい、抗生剤の服用を一時止めていたのでその後の様子を見に、担当医がやって来た。
 
あとは、ずっと付けているナプキンでデリケートゾーンがかぶれてしまい擦れて痛い事を伝えると、しばらくして薬剤師さんが塗り薬を持ってきてくれた。
 
産後の不調といえば
・時々、生理痛のような下腹部の痛み
・抗生剤の副作用による発疹
・デリケートゾーンのかぶれ
・点滴漏れによる右腕の痛み ・・・このくらいである。
 
つくづく、私の身体の負担が少ないように生まれてきてくれた我が子は、何て親孝行なんだろうと愛おしく思う。
 
でも、どれだけ私に負担をかけても構わないから、あと23週お腹に居て元気に生まれてきてほしかったなんて考えたら、たっちゃんは悲しむだろうか・・・
 
長期入院を覚悟して色々な生活用品を持ち込んでいたので、かなりの荷物だった。

バタバタと荷造りをしていると、下腹部が苦しく痛んだので時々横になったりした。

やはり身体は産後、しかも切迫流産で2ヶ月安静にしていた身体はすっかり体力を失い、すぐに妊娠前のように動く事は出来ないのだ。
 
入院2日目に、人工妊娠中絶をするかしないか何度も迫ってきた怖い助産師さんが、退院の手続きについて説明にきた。
 
名前を決めたのかと聞かれたので、『樹(たつき)』という名前にしたこと

樹木のように真っ直ぐに空に帰れるように
樹の事を10日間夫婦で考える事で、苗木のようにひょろひょろだった夫婦の絆が、樹木のように太くなった事への樹への感謝の気持ちが込められていることを話すと

怖い助産師さんは涙を流してくれた。
 
普通、破水するとすぐに産まれてきちゃうのに、〇〇さんは1週間以上頑張ってたから助産師たちの間では希望の光だったんだよ、とのこと。
 
樹くん、って名前、カルテに残しておくからね。と言ってくれた。
 

しばらくすると、今度は同じ歳で入院中に仲良くしてくれていた助産師さんが来てくれた。
 
前駆陣痛の始まりだった7/29の夜中に、不安で仕方なかった私を励ましてくれた助産師さん。
 
助産師さんは、顔を見るなりに抱きついてくれて
「〇〇さん、お母さんになったんですね。すっかりお母さんですね。」と言ってくれた。

「〇〇さんの必死に赤ちゃんを守ろうとしている姿がすごく印象的でした。夜勤明けてからずっと気になってたんですよ。ビックリしました・・・」と、話しているうちに、出産手当金の代理請求の説明をしに事務の人が部屋にやって来て、〇〇さんとはあまり話すことが出来なかった。
 
でも、助産師さんの気持ちはしっかり伝わった。
この病院には悲しくて辛い想い出ばかりだけれど、この助産師さんに出会えたことが数少ない良かったことかもしれない。


手当金の代理請求の同意書にサインをし、諸々確認して夫が迎えに来るのをベッドに横になって待った。

夫が到着したので、たっちゃんを部屋に連れて来てもらった。2日ぶりに会うたっちゃんはやっぱりカチコチにに凍っていた。

外は30℃近い炎天下の晴天。
我が家にはエアコンは無い。
少しでも、少しでも元の姿に近い形で空に送ってあげたい。

夫に用意してもらった水色のペンギン柄保冷バッグに保冷剤をたくさん入れ、その中にタオルで包んだたっちゃんの入った箱を入れ、胸に抱えて正面玄関から病院を出た。

助産師さん2人が玄関までお見送りをしてくれた。

久しぶりの屋外は、太陽が眩しくて夏真っ盛りの暑さだった。

火葬は次の日の午後から予約していて
丸1日、たっちゃんをこの暑さから守らなくてはならない。

帰りの車の中で、ドライアイスを分けてくれそうなお店に片っ端から電話。

葬儀屋さん、ホームセンター、スーパー、アイス屋さんにまで電話したけれど、どこもすぐには用意するのは難しいと…その中で唯一、近くの仏具屋さんが、提携の葬儀場でドライアイスでは無いけれどご遺体を冷やす為の大きな保冷剤があるので提供できると言ってくれたので、その脚で向かう事に。

お金を払うつもりで行ったのに、なんと無償で良いとの事。大きな保冷剤2つと、線香立て、お鈴等の仏具一式を丸ごと貸してくれました。しかも、保冷剤は溶けてしまったら交換できるのでいつでも来てくださいとまで言ってくれて…

人の優しさが心に沁みる…

保冷剤と仏具を借りて葬儀場を後にして、帰宅。

12日前に泣きじゃくりながら家を出て以来の我が家は、すっかり男のひとり暮らしの様相に…😅

私の事をソファに座らせて、夫がテキパキと居間の一角に折りたたみテーブルを設置してスペースを作り

借りてきた保冷剤と仏具と、家にあったお菓子と造花とぬいぐるみを並べて簡易たっちゃんスペースを作ってくれた。

ちょうどソファの正面で、居間の真ん中。

今日1日は家族3人でゆっくり過ごそう。
3人でお昼寝したり、テレビ見たり、ゲームしたり、ご飯食べたりして過ごそう。と夫が言った。


家族3人 最後の時間を過ごそう。