「能楽堂いろいろ」

ー能楽にまつわるちょっとしたネター

 

靖国神社能楽堂

 

 一般的に伝統文化というのは、杓子定規な世界と思われがちなのではないでしょうか。

しかしながら、私の知っている世界について言えば、知れば知るほど懐が深く基本的な考えさえしっかりとしていれば、かなり自由で、それが日本人の考え方の本質なんじゃないかしら、と思っています。

 

 能楽が演じられる空間――能楽堂も、大きさが決まっているようでアバウトだったりします。

 

 

正面舞台は三間四方

シテ柱・目付柱・ワキ柱がある
幕から舞台まで橋掛かりがある
 
このくらいの決まりしかないように思います。
それぞれの能楽堂を比べてみます。

 

能楽堂名 場所 正面舞台 橋掛かり 席数
国立能楽堂 東京・千駄ヶ谷 5.4m正方 幅2.55m
長さ13.5m
627席
矢来能楽堂 東京・神楽坂 5.4m正方 幅2.10m
長さ6.50m
235席
名古屋能楽堂 名古屋 5.91m正方 幅2.86m
長さ11.885m
630席
大濠公園能楽堂 九州・博多 5.64m正方 幅2.40m
長さ10.35m
562席
 

残念ながら、我が本部舞台・金剛能楽堂についてのデータは集められませんでした。座席数は412席です。

 

数字を見ていただいてわかるように、大きさはかなり違います。

畳の大きさでも、「本間」「江戸間」「中間」とあるように、長さの感覚が地域によって違ったことも、影響しているのでしょう。

 

能を習っていたり、演目を観ていると、全ての流れが決まっているように見えるかもしれません。ですが、こんなに舞台によって大きさが違うということは、自然と型(振り付け)や進む距離・歩数も違って考えなければ、演目が成り立たなくなってしまいます。

他の演劇と違って、そういうことも臨機応変に演じるために、あまりキッチリには決まっていないのです。同様に、いろいろなハプニングが起きても、舞台に関わる全員が演目が面白くなるように努めるのです。

 

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