「摺り足はお清め」
ー能楽にまつわるちょっとしたネター
これを読んでくださっているみなさんは、「禹歩(ウホ)」という言葉は聞いたことがありますか?
その昔の中国に大洪水を治めたと伝えられる皇帝・禹(ウ)王がいて、この王の使った特殊な足運びのことを「禹歩」といい、孟子と荘子の唱えた道教の呪術の一つとして日本にも伝わったーーと言われています。
道教の呪術というのは、今でも私たちの生活に残っていて、「あっちの方向から入るのは縁起が悪い」とか「怪我が早く治りますように」と物を撫でたりするアレも道教の呪術からきているようです。
その中でも、貴人が鬼を祓う為に儀式として行った「禹歩」は
神楽舞や祭礼の儀式の「反閇(ヘンバイ)」というステップ
相撲の「四股(シコ)」
能楽の「摺り足(スリアシ)」
として現在に残ることとなりました。
「能舞メディテーション」でみなさんが「摺り足」のお稽古をすると、
ただ摺って歩く「ズリ足」になったり
「足の裏で床を掴むイメージで歩いてみてください」とお伝えすると、足の親指がものすごく上がってしまったりします。
神社で手を合せるのと同じように「禹歩」から伝わったお清めの儀式のように「摺り足」を思うと、随分とイメージが変わるのではないでしょうか?
見所(ケンショーー客席)から見る時も、自分が舞う時も、参考にしていただければと思います。