「お道具と気構え」

ー能楽にまつわるちょっとしたネター

 

  

入門当初、看病介護の必要な家族を抱えていたこともあり、(今でも考えは変わりませんが)手を掛けず小綺麗に生活したいと思い、ジェルネイルをしたりしていました。指輪も然り。舞台を経験してからは、日頃からネイルも指輪もしなくなりました。お茶の嗜みのある方は、ピンとくるのではないかと思います。

大師匠に注意された訳ではありませんが、大師匠が能面打ちをするので、能面に触る機会が多かったこともあり、お能と向き合う時は「お道具を大事にする。面(オモテ)は以ての外。」と何度も言われたからです。

 

楽屋働きをさせていただくようになって、初めのうちはただただ緊張して楽屋に入っていくことだけでやっとでした。能楽堂の楽屋の入り口に書いてあることも多いですが、楽屋内はストッキング禁止です。

もう一つ、独特に思うのは、楽屋内でのご挨拶は、廊下をすれ違うにせよ基本的に座礼だということです。やむを得ない時にも、中腰で片手は床に付いて礼をします。

シテ(主役)が舞台に上がるまでには、「衣裳部屋」で装束を着て、幕のすぐ内側の「鏡の間」で能面を掛けます。上の図の左側にあるのが「鏡の間」になります。この二つの部屋には、私の社中では素人は入れてもらえなかったように思います。

 

シテが装束を付けているのは体力を消耗することなので、短時間で綺麗に着付けるために、楽屋に入ると先ずその日の演目の装束を並べてスムーズに着付けられるように準備をします。衣裳部屋に入る時は、手を洗って、お足袋履き、袴を付けます。装束に礼を尽くすといいましょうか、汚したり傷付けたり間違いがあってはいけないからです。楽屋働きし始めの頃は、お勉強のため早く衣装部屋に呼ばれるとお足袋は履いていてもなかなか気が回らなかったところ、こっそり先輩が耳打ちしてくださることもありました。ありがたいことです。

シテ方は、能面と装束などが大事ですが、もちろん鼓などの楽器も大事なお道具になります。能舞メディテーションでは、小鼓の体験もしていただきますが、お道具を傷付けないように、指輪は外していただければと思います。

 

 

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