参議院議員 姫井 由美子ひめ通信
年末年始特別号2008年~2009年
(民主党参議院第2総支部版)
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知行合一(ちぎょうごういつ)
中国は明の時代の儒学者・王陽明の「陽明学」の基本思想です。「知は行の目的であり、行は知の実行」、つまり実行していないと真に知っているとはいえない、ということを言っています。
 幕末の備中松山藩(現・高梁市)の財政家・山田方谷(やまだほうこく)も、陽明学の実践者として、藩財政を立て直し、高杉晋作の奇兵隊の模範となった農兵制を創設した人です。
 私は、東京に向かう新幹線の窓から、いつも山田方谷の最後の職務地・居宅跡に立つ碑を拝むことを楽しみにしています。閑谷学校(藩校)で教鞭をとった山田方谷は、熊沢蕃山の生家近く(備前市蕃山)に居を構え、塾生の指導をしていました。岡山駅から上京する時、北側の席に座り、吉井川を渡って備前の街を通り抜け、ちょうど和気からトンネル六つ目を抜けた後、一瞬(約3秒)山田方谷の碑が目にとまります。
 陽明学は「良知」を基本として、倫理を個人のものではなく、人と人との間に成立すると考えた「つながり」重視の思想です。世界は一つだけでなく、動物や草木に至るまで一体、心で全てつながっているという考え方は、元来日本で培ってきた、失われてはいけない思想だと思います。


2009年の船出
〈大きく変わる年へ時代を生み出す〉
 09年1月にアメリカでは民主党のオバマ政権がスタートします。08年を表す漢字に「変」が選ばれたように、新しい年を迎えて政治も経済も大きく変わろうとしています。大きく変わるとは「大変」なことでもあります。従来の何かを壊さなければ新しいものを築けないこともあるでしょう。その葛藤と痛みを乗り越えなければ、新しい時代はやってこないのです。変革の過渡期である08年、社会的にも経済的にも暗い話題が続く中で、我が国から4人もノーベル賞に選ばれたことは日本を明るく元気にしました。このノーベル賞ですが、06年の平和賞は、バングラディシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏に与えられました。なぜ経済学賞ではなく平和賞だったのでしょうか。バングラディシュは北海道くらいの国土に、日本の人口以上の人々が住む貧しい国の一つです。そこで彼は、小さな銀行をつくり、仕事もなく担保もない人にお金を貸し続けました。しかし、新銀行東京と違っていたのは、お金と同時に機織り機を貸し、使い方を教え、仕事を創り出していったのです。ついに彼の銀行は、国内に2000の支店を持ち、農村の86%(7万2千の村、約600万人)に利用されるまでになりました。仕事を創るとは、時代を生み出すことなのです。
〈篤志家が未来を拓く〉
 ムハマド・ユヌス氏の目的は自己の利益ではなく、仕事のスキルのない人たちを「いかに豊かにするか」でした。彼のような「社会起業家」は、イギリスでは、ブレア政権の「第三の道」から生まれました。イギリスは、社会的事業がビジネスとしても成り立つソーシャルアントレプレナー(社会起業家)を誕生させたのです。イギリス国内では、現在までに5万人の事業者が77万人の雇用を創出し、5兆円以上の市場規模に達していると言われています。財政難の政府に代わって社会企業家を自立させることで、新しい未来が拓かれていきました。日本では98年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、それまで行政でも民間企業でも出来なかったことが出来るようになりました。もともとは95年の阪神淡路大地震以降のボランティア活動の活性化によりできたNPO法人でしたが、世界的な潮流を受け、日本にも事業型NPOが生まれています。時代を遡ると、江戸時代末期には、二宮尊徳は貧しい農家から出て事業家として成功し、藩の依頼を受けて飢饉ですさんでいた農村にやる気と仕事をおこしました。その上、藩からの報酬を貧しい農家のために使いました。明治政府の大蔵官僚だった渋沢栄一は、退官後、銀行や保険事業など生涯500の企業をつくりましたが、目的は自らの金儲けではなく、日本の近代化でした。彼らのような人材を篤志家と言いますが、今こそ日本には篤志家のような社会起業家の誕生が必要です。
〈地方の元気-農商工連携〉
 2期8年間の岡山県会議員を経験した私は、いかに地方が国を支えているかを実感しました。どんなにいい政策も地方が潤うものでなければ、国全体が疲弊してしまいます。また格差社会は、海外との競争力にも悪影響を与えます。地方の元気を取り戻すためには、①農業再生、②中小企業支援が不可欠です。そのために私はこの一年間「農商工連携」に取り組んできました。農商工連携は経済産業省と農林水産省の合同事業で、それぞれの英知を生かして、農産物を商品化し、販路開拓しながら、新産業としても自立していく道を目指すものです(08年末に90が誕生)。
〈食料自給は防衛力-百姓の復活〉
 40%を下回る食料自給率では、経済上だけでなく、外交上も防衛上も安心とはいえません。松畑熙一著「吉備学への助走」によると、この数字はアフリカの飢餓が発生している国々の自給率とほぼ同じです。しかし、日本は世界一の飽食の国で、5兆円規模で農産物を世界一輸入しています(世界の農産物輸入額の9.5%)。世界一食べ物の少ない国が、休耕田や耕作放棄地が多く、世界一食べ物を捨てている国でもあるのです。自然回帰や環境保全への関心が高まりながら、農業や農村生活からの離脱者が多く、新たに農業に従事する人が少ないのです。かつて3割以上も占めていた農業就業人口が、今やわずか300万人(4.6%)、しかも65才以上が約半数(46.22%)です。
 農業は土からモノを生み出す、ものづくり、仕事づくりの原点です。農産物の代表である米は、土の中で、太陽エネルギーや水や二酸化炭素という無生物を摂取して、炭水化物という有機物になります。一本の稲に米粒は約2万個できます。これこそ生命の源といえます。水田は、現在あるだけでも、全ダムの水量(約51億トン)の3倍もの水量を蓄えているのです。百姓という言葉がありますが、「姓」は苗字であり職業能力のことです。百の仕事のできる能力がないと百姓はできないのです。
〈日本のすばらしさを世界に発信していく〉
 私はできる限り一人一人の意見を聞くために、岡山県ではミニ集会を約100回以上開催し、週1回発行しているファクスやメールでの「ひめ通信」も80号を超えました。
 岡山は県北の約8割が山林なので、林業に関わる農商工連携に取り組み、セルロース系の木質バイオ燃料開発についても議論を重ねました。また、司法書士と森林組合の連携による相続登記の普及にも取り組みました。
 日本の魅力はそれぞれの地域の魅力でもあります。その土地を知り尽くした百姓の知恵と技と努力で作り出された棚田に象徴されるように、私たちの心から、この「生き方の美しさ」をなくしてはいけません。日本のすばらしさ、それは教育であり、食べ物であり、言葉であり、音楽や芸術です。また、誠実に対応し争いをしないといった「義」の心、「和」の心でもあります。まず、日本人が日本のために何ができるか。住んでいる地域のために何ができるか。そんな一人一人の思いと行動を原動力に、帆を元気に張って日本丸を進めていきます。

写真のぶどうは種なしマスカットアレキサンドリア
農商工連携に取り組み全県下の役場やJA、商工会、商工会議所そして農家をまわった。また、瀬戸ジャイアンツ「ももたろうブドウ」をイラン等へ紹介した。


●第169回国会(常会) 1月18日~6月21日
経済産業委員会
①経営承継円滑化法成立
 経営承継円滑化法について、4月24日に質問を行いました。これは中小企業が事業を円滑に継承するための税制改正や事業承継支援センターの設置などを盛り込んだ法律です。相続税を払えないことが原因で相続時に事業承継を諦めるのを防止するため、相続人が自社株式を相続した場合に80%納税猶予するといった措置を講じています。
 私は、相続税や消費税、タバコ税(1箱1,000円)についてまで幅広く質問しましたが、相続税について税制改正で一般国民の増税にならないように質しました。また、事業承継支援センターを有効に活用することも要望しておきました。
②揮発油品確法改正
 バイオ燃料を混合したガソリンや軽油に関する揮発油品確法について、5月22日に質問しました。法案はE3などバイオエタノール混合ガソリンの品質確認や混合業者の登録を義務付ける内容でした。この質問の準備のため、真庭市や中国精油を訪問して製造現場を見せていただき、また大阪のバイオエタノールジャパン関西から話を聞いたりしました。
 私は、今後の日本のエネルギー政策として、特に食料と競合しないセルロース系(木材など)のバイオエタノールの開発を進めるべきだと考えています。
③特定商取引法・割賦販売法改正
 消費者問題は、参議院議員になる前から司法書士として取り組んできましたが、お年寄りに被害が広がっている次々販売などに対処するための特定商取引法・割賦販売法改正案について、6月10日に質問しました。特定商取引法では過量販売解除権が導入され、割賦販売法では過失を要件としない既払金返還ルールが一部導入されました。質問の内容は、消費者問題専門紙の日本消費経済新聞や消費者法ニュースでも報道していただきました。


●第170回国会(臨時会) 9月24日~12月25日
経済産業委員会
 消費者問題や農商工連携、日中関係などについて、11月13日に質問しました。パロマ工業製のガス湯沸かし器の事故を例に挙げながら、経済産業省が消費者保護で腰が引けないよう求めました。
 民主党の議員立法としては、中小企業経営支援のための作業チームに所属して法案作りに取り組みました。一つは「中小企業いじめ防止法」で、大企業の中小企業に対する不当な行為を防止するため、公正取引委員会への措置請求などを盛り込んでいます。もう一つは「地域金融円滑化法」で、金融機関の地域への寄与度や中小企業への融資条件などの公開を義務付けることとしています。
質問主意書
 国会議員は会期中、国政一般について内閣に対して質問することができ、その際の文書を質問主意書といいます。質問主意書は、議長の承認を得たのち内閣に転送され、各省庁で答弁書が作成されます。
①外国人の運転免許取得に関する質問主意書
 外国語で運転免許試験を実施している試験場と受験できる外国語の一覧、中国語での試験を実施している試験場が少ない理由、外国語で受験できる試験場を増やすことに対する政府の見解について質問しました。10月31日には、岡山県華僑・華人総会会長とともに、岡山県運転免許センターに、中国語による運転免許試験を実施するよう申し入れました。
②スマートインターチェンジの利用時間に関する質問主意書
 スマートインターチェンジを終日利用することとできない理由、夜間利用可能だと病人の搬送に便利であることの認識、原則終日利用にする予定の有無について質問しました。
③斜面崩壊対策の予算に関する質問主意書
 道路が斜面崩壊の土砂で通行不能になることを予防する事前対策の必要性、斜面崩壊対策予算の公共事業予算全体の中での優先順位について質問しました。
④河川事業における予防的対策に関する質問主意書
 河川の洪水・氾濫等による水害を予防するための予算の重要性、そういった予防的予算を確保する必要性について質問しました。