私は英語が苦手だ。
初めて英語の授業を受けた中学一年生で、英語教育に絶望してしまった。
私たちの英語教師は、書道教師も兼ねていて、あきらかにそちらのほうが本業だった。
しかも、僧侶だった。
クラスの男の子が、
「俺んち、法事にシバマ先生、呼んじまったぜ」
と言っていたし、
高校生になったら、同じクラスの子に、
「ねえ、⚪︎⚪︎中学出身だよね? シバマさん、って先生、いた?
うちに来たお坊さんなんだけど、先生をやってるって………」
と、言われた。
ともかく、発音がひどい。
これは、いくら勉強しても、絶対にアメリカ人には通じない!
と、確信したのだった。
もう10年くらい前、中学校の小さな同窓会があったが、
一人が、
「俺、いまだに、なんでシバマ先生に当たっちゃったんだろう、って思うんだよ」
と言っていて、
四十路過ぎのおじさんが、言うことでもないが、激しく同意してしまった。
前置きが長い。
かなり年下の従姉妹が、数十年ぶりに実家に来た。
小学生の息子と、再婚したばかりの夫と一緒に。
彼女の職業は通訳で、ダンナさんとは職場で知り合ったのだろう。
ダンナさんは、日本にいながら、日本語を話さなくても暮らせる環境だったから、
ほとんど日本語が話せない。
なので、私たちは従姉妹の通訳に頼ったわけだけど、
やっぱりねえ………。
従姉妹の息子くんと、ダンナさんが、言葉は完全には通じないはずなのに、
とても仲良さそうなのが良かった。
私は、「英語が話せなくてすいません」と、訳してもらった。
(それくらいなら、頑張れば言えなくもないけど、
たどたどしい英語を言える雰囲気でもなく………)
別れ際、母はダンナさんに、
「二人のこと、どうかよろしくお願いします」
と、頭を下げていたが、うん、伝わったと思う。
(たぶん、従姉妹が訳していた)
ダンナさんが私に、何か渾身の一言を言ったのだけど、
申し訳ないが、全く分からなかった。
それが、申し訳ないなあ、、、と、思ったのだ。
(iPhoneに翻訳させれば良かったよね)
従姉妹の一家は、ダンナさんの移動で、アメリカ勤務になるという。
次に会えるのはいつなのか、分からない。
ううう。
今更ながら、英会話の勉強でも始めようかな。
従姉妹の英語は、素人耳でも、早口で流暢で、
ともかく、ものすごく時間と手間を掛けて習得したものなのだよなあ。