コーチングを学ぼうと思ったのは、よこしまな理由だった。
それは2012年のこと。
私は外国人に日本語を教えるプライベートレッスンをしていた。
その頃、私はある生徒さんのことで悩んでいた。
正直いうと、その人がとても怖かったから。
相手は、大柄な50代の男性である。
普段は気さくな人だけど、とっても怖いことがあったのだ。
ある日、私の授業でテキストを読んでいた彼は、読めない漢字でつまづいた。
すると突然、ものすごい勢いでテキストを机にバンッ!バンッ!と叩き付け、「今日は集中できない!帰る!」と言い捨て、出て行ってしまった。
私は怖くてフリーズしてしまった。
後で、謝罪のメールが送られてきた。
そして、翌週からもレッスンは続いた。
彼はまた気さくな紳士に戻り、平穏無事な日々だった。
でもやはり私は心の中でビクビクしていた。
「今日は少し不機嫌そう」と思っただけで冷や汗がでた。
コーチングを習おうと思ったのは、そういう気難しい相手に対して、
武器になるようなコミュニケーションのスキルが欲しかったから。
当時の私は「怒りっぽい相手の感情をうまくコントロールしたい」と思っていた。
相手に対する苦手意識や、ビクビクしている時間から解放されたかった。
でも、コーチングの講座に行き始めてから、それはまったく見当違いなことだったと知る。
コーチングは相手を自分の都合のいいようにコントロールしたり、変えたりするためのものではない。相手にこちらのいうことを聞かせるためのテクニックでもない。
コーチングは相手をサポートするためのもの。
そう教わったとき「そんな思いやりの気持ちで始めたんじゃないんだけどなー」と内心がっかりした私だった。
でも、今は気性が激しい人を目の前にしても動揺することはない。
相手をコントロールしたり、変えたりする必要なんてなかったのです。