最後にもう一ヶ所。行っておくべき場所がある。

 ワイキキビーチから西へ車で10分のカカアコ・ウォーターフロントパーク。

 アラモアナ・ショッピング・センターから、そう遠くない場所にある海沿いの公園だ。

 ここは、オアフに来てから、地元の人たちと話すたびに「どこか、猫がいる場所を教えて下さい」と口グセのように問いかけた成果のひとつ。「カカアコ、猫いるよ」

 そこは、ワイキキのように砂浜があって、水着で遊ぶというような場所ではなく、綺麗に整備された遊歩道がある公園だ。駐車場に車を停めて、海に出る。ちょうど夕陽が一番美しい時間に差し掛かっていて、水平線が煌めいている。間近で風に揺れるヤシの葉。またまた「ひゃあ〜」と声に出してしまった。とにかく美しい。

 綺麗に整備された遊歩道をジョギングする人たち。ベビーカーを押しながら散歩する若い母親たちのグループ。いちゃいちゃとふざけながらやって来る高校生ぐらいのカップル。なんて幸せな光景なんだろう、、、にしても!

 猫がいない!

 あぁあ、言葉は悪いけど「ガセネタ」だったか、それともタイミングが悪かっただけなのか、、、「仕方ないな、こんなこともあるということで」「もう慣れてるからね、こういうの」と、海に向かって腰を下ろせる低い石垣に二人並んで座った。

 時間はまだ夕方の6時半。日が完全に落ちるまであと小一時間はあるだろう。いつもリュックに入れている水筒を出してグイッとやろうとした時だった。

 ニニッ。

 「え?鳴いた?」と、猫の声には聴覚が超人的に働く妻が反応する。「今、聞こえたやん」とその声の方に目を凝らす。僕もその方向を見る。でも、そっちは海だ。大きな石を組み合わせてこしらえられた人工的な出島しかない。

 ニニッ。

 まただ。確かに猫の声だ。「え、そっち?」とさらに目を凝らす。

 すると「まさかそんなところにいたの!?」という場所、石と石の間から、猫たちがモコモコっという感じで姿を現した!

 遠目でもそれとわかる三毛猫。茶と白が入り混じった大きなやつ。まだ小柄だけど、喉元にふんわりとした毛を蓄えた茶トラ(どうやら、ニニッと鳴いていたのはこいつだ)。

 このあたりで、猫たちの世話をしている人たちがいると聞いていたが、ひょっとしたら、僕らをその人たちだと勘違いしたのかもしれない。

 「ごめん、食べるもの、何もないねん」と言いながら、チッチッチッと呼びかけると、三毛がトコトコと近寄って来た。体全体でいうとほとんどが白くて、三毛という感じはしないのに、尻尾が特別だ。茶と白が地になって、そこに黒の斑点が散りばめられている。

 僕らはその子を交代に撫でた。

 

 「こんな夕陽を毎日浴びてるのか、えぇなぁ」とその猫に向かって呟く。まったく羨ましい限りだ。

 ハワイのサンセットに感動する人は、これまでも、これからも、数限りなくいるだろう。しかし、そこに猫がいるだけで、心が一層安らぐ。沈む夕陽に、猫がいてくれて良かった。

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 観光の島で、猫旅できるか・・・それを確かめるために行ったオアフの四日間で、何とか合計20匹以上の猫たちと出逢えた。これは充分にミッション達成と言っていいだろう。

※このオアフ猫旅報告の中で最後に紹介したカカアコ・ウォーターフロントパークは、2017年の10月にクローズされたとのこと。

 大きな理由はホームレス問題だったようで、安全や公衆衛生の改修ができるまでは入れないらしい。

 「住み着いていた猫たちはどうなったのか?」と気になるが、保護団体の活動がきっちりしているアメリカ。きっとちゃんと保護されていて、公園が再開すれば、またここに戻って来ると信じている。

                                -パウ-