2019年3月に厚生労働省の『授乳・離乳の支援ガイド』が改訂されています
改定前のガイドでは
・鉄分は生後9か月以降で不足しやすい
・ビタミンDの不足についての記載はなし
でした。
改定版では
✦生後6か月時点でヘモグロビン濃度が低く鉄欠乏を生じやすい
(母乳育児の場合)
✦ビタミンD欠乏の指摘もある
そのため
▶▷母乳育児を行っている場合には適切な時期に離乳を開始すること。
そして、鉄やビタミンDの供給源となる食品を意識的に取り入れることが重要である。
と記載されました
では
なぜこのように改定されたのでしょうか?
その理由は
新しい赤血球を作るのに最低限のヘモグロビンの鉄はあっても、
フェリチンという貯蔵鉄がないと、
鉄不足と体が判断してしまう!
ことが分かってきたからです。
つまり
体内に鉄分があっても、
鉄の蓄えである「貯蔵鉄」がなくなる時点で、鉄欠乏性貧血になる
のです!
「貯蔵鉄」って何?
という方のために、ご説明しますね
✱鉄分✱って
体の中のどこにあるの?
体の中のどこにあるの?
体内の鉄分はどこに存在しているかというと
60~70%➭赤血球中に存在(ヘモグロビン鉄)
▶▷『機能鉄』といいます
20〜30%➭肝臓や脾臓、骨髄に存在(フェリチン、ヘモジデリン)
▶▷『貯蔵鉄』といいます
0.3%➭・筋肉中に存在(ミオグロビン中の鉄)
・酵素の構成成分として存在
(呼吸鎖に関与する酵素チトクローム Cや、 神経増殖と髄鞘化に関与する酵素など)
▶▷『組織鉄』といいます
このストックされている『貯蔵鉄』は
『機能鉄』が不足したときに利用されます
つまり
体内の鉄が不足すると
まず『貯蔵鉄』が使われるのです。
この状態が
▶▷貧血のない鉄欠乏ですね
体内にストックしてある鉄分があるのに、
鉄不足だー!!
と、身体が反応してしまうのですね〜。
さらに鉄がなくなってくると、
ヘモグロビンが作られなくなり、鉄欠乏性貧血となるのです。
因みに
妊娠末期にお母さんから赤ちゃんにたくさんの鉄が送られ、これが貯蔵鉄となるのですが・・
母乳で育てている子の場合
貯蔵鉄は次第に減っていき、6ヵ月頃にはほぼ使い切ってしまうと報告されています。
(WHO世界保健機関より)
以上をまとめ、改定前と後を比較すると
改定前
➭ヘモグロビンの鉄がなくなり始めて、貯蔵鉄のフェリチンからの補充を使い切り、
さらにヘモグロビンの鉄がなくなって鉄欠乏性貧血になるのが生後9ヵ月頃。
改定後
➭ヘモグロビンの鉄がなくなり始めて貯蔵鉄のフェリチンからの補充を使い切り、
鉄欠乏となるのが生後6ヶ月頃!
ということです
この鉄欠乏となってしまった状態から、
再びヘモグロビンもフェリチンも満たされるまでには、
鉄を補充し始めてから3ヵ月程度かかるといわれています
完全に鉄欠乏性貧血となってしまった9ヵ月頃から慌てて鉄分を摂取しはじめても、
鉄分が満たされるのは1歳以降になってしまいますよね・・
心身ともに急成長する生後6ヵ月から1歳までの時期に、鉄が足りない状態で過ごしてしまうことになるのです
しかも
この急成長の時期に鉄が欠乏状態だと、
その後鉄欠乏が解消されても、小学生以降の学習能力や運動機能などの発達が遅れることがあるという報告があります。
貧血予防だけではなく、
癇癪を起こさない子にするために、
学習能力や運動機能が順調に発達するように、
離乳食を開始する6ヶ月頃から、
積極的に鉄分を与えてあげましょうね