こんにちは
相馬由美子です。
相馬由美子です。
こちらのつづきです。
店に行くと
店にはさっきカギを拾ってくれた人がいた。
店の中には何台も車があった。
ピカピカの車も、
私の車のように薄汚れて
キズだらけの車もあった。
どの車にも
運転手と、隣には人が乗っている。
きっと、友だちなんだろう。
また別の車には、
後ろの座席にも人が乗っていた。
車の種類も様々だ。
軽自動車もあれば
ファミリーカーも、
トラックもあれば、
スポーツカーまで。
みんな修理やメンテナンスを待ってるの？
ピカピカの車は
メンテナンスなんて必要ないんじゃない？
どの車も本当に修理が必要なの？
わからない。
でも、
あれ？
修理する人もいないし、
どこで修理するんだろう？
ただ車が何台も停まっているだけだ。
それにしても、私の車
本当に前みたいにきれいになるの？
もし、そうなるなら
今度こそ、絶対に大事にしたい！
きれいに、大事に乗りたい！
店主が私のところに来た。
「ドライバーの方だけ降りてください」
「カギを持って、こちらへどうぞ」
案内されたところには
大きな窓から光が降り注ぎ、
座り心地の良さそうなイスと、
テーブルにはお茶が用意されていた。
「お車、どうされたいですか？」
私は迷わず
「元通りにしたいです！」
「車だけ、きれいにしますか？」
店主が聞いてきた。
「外側も車内もすぐにきれいになりますよ」
「もちろん、壊れたところも全部修理しますよ」
「でも、それだけじゃないんですよ」
「もっと大切なところをきれいにする、専門の修理屋なんですよ」
もっと大切なところ？
なんだろう？
店主が出してくれたお茶を飲みながら
目を閉じて考えてみた。
私はどうしたいんだろう？
車の外側はもちろん、
車内もきれいにしたい。
だって、足元はゴミだらけ、
タバコの匂いも本当はキライ。
なんだかわからない荷物も積まれてる。
まずは、新車の時みたいにスッキリさせたい！
だけど…。
それだけじゃない？
他に、大事なところってなんだろう？
なに？
なに？
なんだろう？
私がここに導かれた理由なのかも？
そもそも、なんでここに来ようって
思ったんだっけ？
そうだ、私はもう嫌になったんだ。
「友だち」の言いなりになるのが。
ふと、目を上げると
来たときに停まってた車が目に入った。
ハンドルを握ってニコニコしてる。
隣に乗ってる友だちも楽しそうだ。
あれ？
あの車。
確かさっき停まってた車。
乗ってる人たち、笑ってる。
おかしいな。
ついさっきまでは笑ってなかったよ。
二人とも、まっすぐ前見て
ピクリとも動いてなかった。
まるで静止画みたいだった。
それに、車も汚れてたのに
あんなにピカピカ。
車から光が出てるみたい。
いつ、修理も洗車も終わったの？
音、してなかったよね？
あ、それより今は、私の車のことだ。
店主の目を見て、
「外側も、車内もきれいにしたい」
「全部直して、元通りにしたいです」
「それと、友だちの言いなりになってるのをやめたい」
「できるなら…」
思わず下を向いてしまった。
店主はにっこり笑って、
「わかりました」
「それでは、カギをお預かりします」
と、カギを受け取り、
「車でお待ち下さい」
と言って、奥の小さな部屋に入っていった。
車に戻ると
友だちは静かに座って待っていた。
運転席に座り、ドアを締めた。
店主が窓をノックした。
あれ？
今ドア閉めたばかりだよ？
店主はピカピカのカギを持っていた。
これは？
「これは先ほどお預かりしたカギです」
「汚れ落として、きれいに磨きました」
「車の外側も車内も、きれいに掃除しておきました」
「壊れてるところも全部直しましたよ」
いつの間に？
つづく
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