小池一夫、小島剛夕著
子連れ狼
より
抜粋しました
川は海に注ぎて波となる
大きなうねりの波
小さなうねりの波
寄せては返し 繰り返し
繰り返し絶ゆることは無い
人の生命も
この波と同じく
生まれては生きて
死んではまた生まれる
ほどなく
父の五体は物言わぬ屍となろう
だが生命は
波に同じく絶ゆることは無い
来世という岩頭に向かいて
また生まれ変わるべく
うねっていく
五体は死んでも
父の生命は永遠に不滅なのだ
おまえの生命も然り
我らの生命は
絶ゆることなく永遠に不滅なのだ
父の皮破るるも
血が噴くとも
うろたえるな
父の五体倒るるもひるむな
父の眼閉じらるるも
その口開かぬとも
恐るるな
生まれ変わりたる次の世でも
父は父
次の次の世でも
我が子はおまえぞ
我らは永遠に不滅の親子なり