本好き少年は受け取る | ドリームのイマジンブック

ドリームのイマジンブック

ここはイマジンワールドと現実世界を結ぶ、狭間の空間。
そこではドリームが自分やイマジンワールドにいる誰かの想いを伝える「案内人」として活動している。
この本はそんな世界をつなぐ鍵となっている。

—前回のあらすじ—

ビックリしたなぁ...。乃和ちゃんと一緒に本屋さんに行ってきたんだけど、まさか「イマジンワールド」の名前を聞くとは思わなかったよ。しかも、絵本版が出ていたなんて...う~ん、僕も買おうかな?まだ図書カードもあるし、土日に買いに行こーっと!

そういえば、今日は深奥の森に行くんだよね?

今回は約束を忘れなかったぞ!えっへん!!

あっ、アクシオスとメルトが待ってる!早く行こう!

 


 

『スノマンくーん、こっちこっちー!!』

 

「はい!今行きまーす!」

 

アクシオスとメルトに案内されてたどり着いたのは深奥の森。そこは自然豊かな森林で、広大な面積を誇る。また、この森は妖精やモンスター達にとって憩いの場となっている。

 

「えっと...地図によると、ここをまっすぐ歩いたらフェアリービレッジがあるって~♪」

 

「確かにまっすぐ...ですね」

 

「オイラには曲がりくねって見えるけど...気のせい?」

 

メルトは僕達の意見を無視しながら前へ進んでいく。どうやら映画館で知り合った妖精のことに夢中のようだ。

 

「わ~たし、とーきーめーいーちゃーいーそ~!うふふふ~っ♪」

 

「メルトさ~ん!待ってくださ~い!」

 

~~~~~~~~~~~

 

「とーちゃくー!!」

 

『ハァ.....ハァ........』

 

 僕とアクシオスは息を切らしながらも、なんとかメルトの元へたどり着いた。フェアリービレッジ、そこは妖精達が住む小さな村である。

 

「スノマンくんはここに来るのは初めてだよね?まずは...この小瓶を飲んで小さくなるの!」

 

「あれ?どこかで聞いたことあるような...」

 

「これはアリスポーションだね~。アリスって人が先祖代々受け継いで作っている、すご~いものなんだよ~」

 

(えっ、イマジンワールドこの世界のアリスって襲名制なの!?)

 

「あと、アリスケーキも有名ね!こっちは食べると大きくなるから、帰りに食べましょ♪」

 

「はい!」

 

メルトから渡された小瓶の中身を飲んでみると、ラムネのようにしゅわしゅわと口の中で溶けていく。

 

(これは...マスカット味かな?)

 

全部飲み切ると、僕の体がみるみる小さくなっていく。さっきまでミニチュアのように見えていた村が現実のものになろうとしている。目線が変わるとここまで違って見えるとは...。

 

「えっと、次は~...長老様にご挨拶だね♪あっ、長老さま~!」

 

メルトが"長老様"と呼んだ先にいたのは、長いひげを生やした、小柄なおじいさんだった。

 

「ふぉっふぉっふぉ、ようこそフェアリービレッジへ」

 

「本日はご協力感謝いたします」

 

「な~に、例には及ばんよ。この村のことをもっと知ってもらいたいからのぉ。じゃから、期待しておるぞ~」

 

『はい!』

 

僕たちは三手に分かれてインタビューすることになった。アクシオスは事前に取材に応じてくれた妖精の家族の元へ、メルトは村の人が集まる広場へ、僕は長老様のいるお屋敷へ向かった。

 

長老様のお屋敷はとても広く、独特な模様のタペストリーが掛けられている。僕は丸太のテーブルが置かれた部屋に案内された。

 

「あらためて...ようこそフェアリービレッジへ。ささっ、村一番のしぼりたてジュースを召し上がれ」

 

「ありがとうございます!」

 

木でできたマグカップにりんごジュースがなみなみと注がれていく。爽やかな香りが辺りを漂っている。とても美味しそうだ!

 

「いただきます」

 

口に入れた瞬間、リンゴの甘みが口全体に広がっていく。後味はさっぱりとしていて、すっと消えていった。こんなに美味しいりんごジュースは初めてだ!

 

「お~、喜んでくれて嬉しいわい!」

 

あまりの美味しさに惚れ込んでしまったが、インタビューを始めよう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

インタビューが無事に終わり、ちょうど終えた2人と合流した。

 

「スノマンくん、お疲れ様!いい記事書けそう?」

 

「はい!アクシオスさんの方はどうでしたか?」

 

「オイラは驚きっぱなしだったな~!兄弟がいっぱいいるご家族だったんだけど、みんな顔がそっくりで誰が誰だか見分けがつかなくて大変だったよ...」

 

「それは大変でしたね...」

 

「あ、そういえばメルト、"運命の人"は見つかった?」

 

「ううん、全然見つからなかった...でも、諦めないわ!」

 

『アハハ...』

 

取材も一段落し、村を出ようとしたその時、

 

「雪だるまさん!」

 

どこからか小さな女の子の声が聞こえた。

振り向くと、そこには頭にくるみを2つ付けた妖精さんが立っている。

 

「雪だるまさん!これあげる!」

 

「これは...?」

 

「くるみのクッキーだよ!頑張って作ったんだ~!」

 

「わぁ~美味しそう!ありがとう!」

 

「二人にもあげる!」

 

「オイラにもくれるの?ありがと~!」

 

「いい香り~!帰ったらみんなで食べましょう♪」

 

「あっ...」

 

「ん?どうしたのスノマンくん?」

 

「これ、大きくなったらクッキーが小さくなっちゃうんじゃ...」

 

『あっ...』

 

今は妖精さんと同じくらいの大きさだが、元のサイズに戻ればクッキーはたまごボーロ並に小さくなってしまう。これではせっかくもらったものが台無しだ。

 

「それなら心配いらないよ✨」

 

「あっ、あなたは..あの時の!?」

 

「やぁお嬢ちゃん!久しぶりだね~、元気にしてた~?」

 

「はいっ!もちろんです~っ!」

 

...思いもしなかった。まさか古いタイプの3Dメガネをかけた緑帽子の妖精がいたなんて。

 

「このキノコパウダーをかければ、君たちに丁度いいサイズになるはずさ✨」

 

「でもこれ、カレー粉みたいな色してるけど...大丈夫?」

 

「安心したまえ!これはアリスケーキの材料に使われているから、口に入れても問題ないよ✨」

 

(意外と身近だったー...)

 

アリスケーキの意外な事実も知れたことだし、改めて...帰ることにしよう。

 

「アリスケーキって、意外とあっさりしてるんだね~」

 

「クリームがたっぷりのっているわりにしつこくないから、いくらでも食べれちゃいそうね♪」

 

もちろん、元の大きさに戻してからね!

 

「それで...次は洋菓子店に行くんですよね?」

 

「うん!あそこのお店、ちょっと変わったスイーツがあるのが有名なの♪わたしもよくそこで買ってるんだ~」

 

「だからメルトのデスクにお菓子がいっぱいなんだな...」

 

「だって甘いものは編集のエネルギーなんだもん!」

 

『確かにそうなんだけどさぁ(ですけどねぇ)...』

 

洋菓子店への移動は"テレポ"というスキルを使ってワープするそうだ。二人がお店の場所を知っているようなので、任せることにした。

 

 「スノマンくん、いくよ~...」

 

『せーのっ!!』

 

 

―――――――――――

――――――――

――――

 

~つづく~