アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』を読み終えた。
ここでは殺人事件は一つも起きず、したがって謎解きはない。
クリスティーの中では異色の作品といえよう。
「優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた」
だが、女は(妻は)それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱き始めるー
裏表紙には、以上のような文言が書かれている。
解説で栗本薫は、この作品を哀しい本、恐ろしい本だという。
私はそうは思わなかったが、たしかにそういう見方はできる。
これは何ともいいようがない魅力的な作品であり、一気に読み終えた。