急ぎ気味の最終巻:☆4
主人公の育ての親が、疫病の神の名を持つ兵器を冥界から持ち出したのが9巻。
初版の発行は2020年2月のことでした。
てっきりそこから後年のペストか、あるいはスペイン風邪につながる話でも
やるのかと思ってましたが、それから間もなくして現実に起きたことを考えれば
「出来なくなった」ことは容易に想像がつきます。
駆け足気味になってしまったのは、少なからずその影響があったのかもしれません。
納得はしていますが、もうちょっと続いてほしかったというのが正直なところです。
↑雑に処理したネタに対するメタ発言に見えなくもないツッコミ(同じく13巻より)
本作の物語は、歴史上の出来事や実在の人物を絡めて描いた純然たるフィクションでした。
そしてトーマス・ロックリーの弥助本はファンタジーどころか
悪質な妄想と文化盗用と歴史の捏造でした。
主人公のモデル…というか元ネタであるところのネルソン提督の時代(1700年中頃)だと
ロンドンのペスト大流行は100年も前(1600年中頃)に終わっちまってるので、
ペストでやれるとしたら“マルセイユの大ペスト(1720年)”あたりでしょうか。
パンデミックの現場を物語でやろうとすると陰惨な割に絵が地味になりやすいので、
ヨーロッパ社会への復讐を目論み疫病をばら撒こうとする主人公の育ての親=コロンバスと、
それを阻止しようとする主人公たちの水面下での闘い、みたいな展開にするのが妥当かと。
そんでもって舞台は都市部ではなく辺境の片田舎にでもして、数人の犠牲者は出たものの
コロンバスを打倒し、感染の拡大は水際で防いでメデタシメデタシ…と思いきや、
その場から逃げ去るネズミが一匹…という不穏な終わり方にしてみるのがそれっぽいかと。
ペストは蚤(ノミ)を媒介に感染する(ネズミは運び屋)病気なのでこの演出が使えますが、
インフルエンザは感染源やルートが未だにハッキリしてませんので、
「古代兵器のカプセルをドーバー海峡にでも投げ捨ててやれやれひと安心」からの
「海流の関係で数百年後にどこかの陸地にでも打ち上げられる」ことを示唆される
…てな感じで話を持っていけば、視覚的にも分かりやすい表現は可能でしょう。
たぶんそれくらいは考えてたんじゃないかなと思いました。
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