,医学部4年生の息子は、全国共用試験(CBT、OSCE)に学内トップクラスの成績で合格し、臨床実習に向けてはりきっている。

数学が苦手で受験では苦戦した息子だったが、医学部での専門試験には数学は関係ない。

丸暗記も苦手だが、得意な論理的思考力を生かして全てを関連付けて覚える学習法は、範囲が広ければ広いほど有利だった。

テスト前にサークルの集まりに顔を出して驚かれたという。

短期集中型ではないので、テスト前であろうとなかろうと関係ないとのことだ。

 

年末年始は、おそらく最後になるかもしれない、ゆっくりとした休みを過ごすことができた。

早期退職した私とこれまでにないくらいゆっくり話もした。

私にゆとりができたせいもあるだろうか。

医学の専門用語攻めで語り始めるときりがなく、本当に彼は医学が好きなんだと改めて思わされた。

進級できない人も多いようだ。息子は

「落ちる人は、頭がいいからとか家が開業医だから医学部に来ただけの人が多い。」

と語っていた。

浪人時代と同じくらいの勉強が6年間続くわけだ。

志もなく好きなことでもなかったらそれは本当に苦痛だろう。

息子は、家にいても気になる医学用語があると常にスマホで検索し学んでいた。

 

一人旅から帰って実家に戻ってきた息子は、一度所用で自分のアパートに戻った。

その間、家庭教師先にも行ったそうだ。

兄の高校入試で実績を挙げた息子は、弟も是非と言われ、忙しい学年だから都合のいい時に来てくれればいいと懇願されて続けていた。

何事もやるからには全力投球でやる。
事象を観察し論理的に解釈し最善の対応を考える。

医者に向いてると思う。

苦手だった数学は何のために必要なのか?

論理的思考力を見るためだろうが、数学的ひらめきと医学的な考察力はまた違うように思う。

「俺、数学だけはダメ。本当は文系かも。」と息子は言う。

理系の最高峰のように言われる医学部だが、医者として本当に必要な能力は別のところにあるかもしれない。

 

休み中は、息子の運転で家族皆で遠出したり、料理を作ってくれたり、息子との時間を満喫した。

一時期の、家に帰っても自分の部屋に籠ってしまうような感じはなくなった。

たくましく頼もしくなり、大人になったことを実感した。

近所の幼少から診ていただいている医院の先生宅へご挨拶にうかがったりもした。

すると、次の日先生自らプレゼントをもって訪ねてきてくださった。

それは「聴診器」だった。

「実習では使うでしょう。いくつもあるから。」とおっしゃった。

先生は、医大生だった息子さんを交通事故で亡くされている。

お心を思うとほろりとするものがあった。