水族館を観終わり、
休憩所のベンチに腰掛け、身体を休めていた。
元旦は未明から三保松原にて初日の出を撮影するため、寒空の下で待機していた。
4時に起きた所為で睡魔に勝てず、うとうとしていた。
眠い目を擦りながら、鞄から文庫本を取り出す。
両目を開いて読書に集中していれば、不意に眠っているのに気付き飛び起きたりしないだろう。
木漏れ日の下、
「稲川淳二の怪談冬フェス〜幽宴二〇一八」
のファイルステージ作品に集中していると、
斜め後ろから男女の声と紫煙が風に乗って流れて来た。
本に夢中で会話の内容は覚えていないが、
優勝作品を読み終わる頃には聞こえなくなっていた。
本を閉じる。
ふと、そよ風に煙の匂いがした。
まだ吸っているのか。
しかし振り向くと、辺りには誰も居ない。
青い空と芝生。
木漏れ日が射す木立ち。
そして休憩所には自分だけだった。
“怪談本を読んでいると幽霊が寄って来る”
と噂に聞いた事があります。
休憩所には、最初から私一人しか居なかったのかもしれません。
元旦に木漏れ日の下で読んでいた怪談本は、
こちらです。
「稲川淳二の怪談冬フェス〜幽宴二〇一八」
冬フェス実行委員会/編 稲川淳二 ほか 著
竹書房文庫
日本一を決める怪談最恐戦で語られた怪談を掲載!稲川淳二など恐怖の語り部が大集合!
【マンスリー投稿部門】優秀作も収録!