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fishy 金原ひとみ


友愛でも共感でもなく、この刹那に集う女たち。
作家志望のライター美玖、共働きで女性誌の編集をつづける弓子、インテリアデザイナーのユリ。

都内きってのナンパ街となった銀座のコリドーで、
三人は互いのプライベートに踏み込まない距離感を保ちながら、
この場かぎりの「ともだち」として付き合いをつづけている。

気ままな飲みともだちに見えるが、彼女たちが抱える虚無は、
仕事でもプライベートでも、それぞれに深い。

結婚したばかりの男に思いを寄せ、不倫によって日常が一変する美玖。
サレ妻となった弓子は、夫の監視に疲弊しながら仕事と家庭と自尊心を守ることに必死だ。
ユリの生活はリア充に映るが、まったく不透明で真実を見通すことができない。

愚かしく、狂おしく、密やかに――彼女たちの日常にひそむ罠と闇と微かな光。
女性の生き辛さと新たな連帯をを鮮やかに切りとる著者の到達点。





以下ネタバレ




金原ひとみさんの作品は

何も起きず、何も始まらずに、

そのまま終わるような本もいくつかあるが、

珍しくいろんなことが起こるタイプの物語で面白かった!!


金原さんの本はいつも魅力的な男子が出てくるけど

最近の作品はいいところのない男たちが出てきて、

「ハァ〜マジで現実の男ってみんなこうだよね」

って感じが詰まっててそれはそれで面白い。


それにしても不倫ネタは今までもたくさんあったけど、

ついに慰謝料請求されたり、

夫が家からいなくなったり、

弁護士つけて揉める話まで出てくるようになった。


金原さんの物語には実体験がかなり反映されるから、

なんとなく年々ひどくなっている気がして心配になった。


それにしてもこれは恋の話ではなく、

出てくる女3人の友情物語で、

表面上は仲良くしていても一皮剥けば本心はわからないという女のドロドロが本来はメインの作品なんだろうと思う。


多分男が読んでもわからないだろうな。


ここ最近の金原作品の中では1番面白かったかも音譜





気に入った文章



「憧れながら蔑み、嫌いながら好み、褒めながら貶し、拒絶しながら求める。」

fishy p82



「一瞬、腹が立った。次の瞬間呆れた。そしてまた次の瞬間永遠に離婚はしないと心に決めた。最後の瞬間まで、自分が離婚するのかしないのか分からなかった。どっちに転ぶのか分からなかった。こんなコイントスの裏表のように、あやふやな気持ちのまま人は離婚するしないを決めてしまうのか。いやしかし私が決めたわけではない。コインの裏が出た。ただそれだけだった。」

fishy p132



「こうして来る日も来る日も浅いおじさんたちの相手をしている内に、私の思考回路も完全に真っ当になってしまった。毎日のようにガールズバーに勤務していて知ったことは、客に異様にナショナリストと差別主義者が多いということだった。でも考えてみれば、キャバ嬢や高級スナックの女は落ちにくいし高いからという理由で安価なガールズバーに来るワンチャン狙いの男にリベラリストがいないのは当然だった。本番NGな風俗嬢と本番をしたという経験を武勇伝のように、あるいは俺のグレイトなテクニックがどうこうというニュアンスを込めて語る男や、下ネタやエロ話でこっちの反応を楽しむノータッチ痴漢男や、時代遅れのマッチョイズムをひけらかして若い子を批判する男、そういう奴らとは一線を画していると、先進的な自分を演出したいがために知的アピールしようとして無知を晒す男、Twitterなどを見ていると、ひどい差別や抑圧の体験ツイートが毎日バズっていて、こんな人間がどこにいるんだろうフィクションなんじゃないの?と思っていたがとうとう謎が解けた。そういう人間はガールズバーにいた。」

fishy p158



「泣かせるために作られたフィクションは、勃起させるために作られたポルノと同じだ。一時的な快楽を得ることはできても、そこから本質的な問いや力を得ることはできない。射精はできても、射精した瞬間どんな内容だったかすら思い出せなくなる。」

fishy p168




若い子に下ネタ言って反応を見てニヤニヤする男を

ノータッチ痴漢男って表現するのいいですねw

相変わらずキレッキレで好きです笑い泣き