好きな食べ物、苦手な食べ物ってなんだろう?~にじ組食育~
〝好き嫌いのない子に育って欲しい〟そう思っている親御さんは多いのではないでしょうか。そもそも、乳幼児期に苦手な食べ物が出てくるのは、当然のことです。自然界にある、苦味や酸味という味の初めての刺激を、生まれて間もない子ども達は「毒かもしれない!気をつけろ!」と本能で警戒しているからです。食べ慣れていない料理が苦手なことも同じ理由から。ですから、初めてのピーマンを例え「べぇ」と出してしまったとしても「うわ、やっぱり、うちの子も好き嫌いのあるタイプの子だったんだ!」なんて思わなくていいのです。ほとんどの子がそんな風にしてお食事をスタートをしています。そして、それらの味覚を、毒ではないものなんだと認識できるまでには少し時間がかかります。また、その時間のかかり方にも個人差があります。食べても大丈夫だと安心できる経験の積み重ねと、身体にとって有効なものなのだと理解できることが、苦手だった食材や料理を美味しいと感じられるタイミングになります。好き嫌いをなくしていくには、思ったよりも長い時間が必要です。では、どうして?どうして好き嫌いがない方がいいのでしょうか?一番の理由は〝将来栄養バランスの良い食生活を送れるようになるため〟です。栄養バランスの良い食事を日頃から実践できていれば、健康を損なわずに生活できる、特定の病気にかかりにくい状態が維持しやすくなると言えます。また、好き嫌いや偏食なく、さまざまな食材から栄養摂取できていると、不足した分の栄養素を他の食材で補える場合があります。食材同士で相補的な栄養摂取が可能になるのは、好き嫌いが少ないことの大きなメリットと言えます。でも、それだけではありません。二番目の理由は〝子ども達の視野や可能性を広げることに直結しているから〟です。ピンと来ない方も多いかもしれません。まず、苦手な食べ物を食べられるようになった、ということは、成功体験の一つです。成功体験が増えると子ども達にとってどんないいことがあるか?はとっても長いお話になりそうなので、ここでは割愛させていただきますが、一つご紹介すると、苦手なものを克服できたという事実は、今後も苦手なもの(や事)を、自分は乗り越えることができるという自信、乗り越えようとする意欲となります。それだけでも、視野や可能性を広げてくれることに繋がりそうですね。そして、もう一つは、食事が大切なコミュニケーションの場であるという点です。私達は、相手のことを良く知りたいと思った時、仲良くなりたいと思った時、話を聞いて欲しい時などなど、一緒に食事をするということは、大切な行為であり、私達の人生の幸福度を上げることに直結しているのではないでしょうか。誰かと食事を共にするということは、それだけ私達の視野や可能性を広げることに繋がるとワタシは思っています。ですから、いつかみんなが好き嫌いのない大人になれように、そのお手伝いをしたいのです。毎日の給食、みんなとの会話、お父様やお母様とのお話、そして食育活動。どれか一つでも、みんなのいいチカラとなりますように。そんな思いで給食の先生達はご飯を作っていますさて、今回はにじ組さんの食育活動の月です!!「楽しいだけじゃなくて、やっぱり苦手なものが苦手じゃなくなるきっかけになる活動にしたいなぁ。」担任の先生とも話し合って、企画をいくつか考えました。「…でも、なんで苦手なんだろう?どこが苦手なんだろう?なんで食べたくないんだろう?この活動なら本当に食べたくなるかしら?」大人の頭だけで考えていると『?』がいっぱい浮かんできます。そこで!『みんなの苦手な食べ物はなぁに?』というとことからスタートして、にじ組さんと食育活動そのものを一緒に考えていくことになりました。まずは『子ども食育会議』を開催しました。「みんな苦手な食べ物ってある?」「あるーーーー!!!!!!!」にじ組さんみんなの苦手なものを聞いてみると、以下の通りでした。・トマト 3票・ピーマン 2票・わかめ 1票・キャベツ 2票・豆 1票・餃子のお肉 1票・きゅうり 1票・なす 1票・パプリカ 1票・ブロッコリー 1票・いんげん 1票「どんなところが苦手なの?」「あじ!」「そっかー。味ね、味のどんなところ?」「すっぱい!」「にがい!」「しょっぱい!」「あと、においも嫌いだよ!」「色も嫌なんだよなー!」「そっかそっか。においと色もね。じゃあさ、こうしたら食べられる時もあるんだけど~って、何か思いつく?」「がんばれば!」「そう!がんばれば食べられるよ!」「んーなるほど。」(そっか、いつもみんな頑張っているんだよねエライエライ)「でも、みんながあんまり頑張らなくても美味しく食べられる方法って何かないかな?」「好きなものと一緒なら食べられるかも。」「小さくしたら食べられる時あるよ。」「お肉と一緒になっていたら食べられる!」「ケチャップ味なら美味しいよ。」「お茶ですぐ飲んじゃえばいい。」みんなが沢山考えてくれました。今回の子ども食育会議はここまで。みんなのアイデアを元に考えました。これを形にするとしたら…何だろう?まずは、みんなの苦手なものを小さくして。お肉と一緒にまぜて。そうだ、色も見えなくして。いい匂いがする調理法…と。そうだ!餃子にしてみよう!(餃子のお肉が苦手な子は半分をツナにして作ります。)みんなに提案すると、みんな賛成してくれましたそれぞれの〝苦手なもの〟を餃子にするのに、すっごく楽しみにしてくれるなんて。(この子ども達の反応はワタシにとっても嬉しい発見でした。)エプロン、三角巾、マスクでお支度を整え、手を洗ったら準備万端です。ホットプレートは熱いので絶対に触らないこと。お肉に触ったら先生にすぐに教えて欲しいこと。をお話して、さっそく餃子作り開始です。これが、みんなの苦手な食材達。直前にもう一度聞きなおして、それぞれの食材を用意しました。(少し時間が経つとまた苦手なものが変わっているのも新たな発見でした。)ビニール袋に入ったお肉(タネ)と合わせていきます。そしたら、みんなで掛け声を合わせて、5回モミモミするよ~!いーち!にーい!さーん!しー!ごっ!みんな上手です。でも、みんなの苦手なものをモミモミしていますから…「うわぁ気持ちが悪い。」「美味しくなさそう…。」ネガティブな意見が沢山でてきます。さあここからが難しいところ。餃子の皮の登場です。モミモミしたビニール袋の口を縛り、端っこに先生がハサミを入れ絞り口を作りました。まずは、大きな皮の模型で説明します。「餃子の皮を広げたら…さあ、どこにタネを絞り出すのがいいでしょうか?」「まんなか!」「おしい!この後ね、皮を半分にぺたーんと畳んで餃子にするから…」「半分よりちょっと上、のこの辺です。」「じゃあさ、折り紙みたいに折り目をつけておけば、半分が分かりやすいんじゃない?」なんと、こんなグッドアイデアまで飛び出すにじ組さんです!「素敵なアイデア!そうしよう!」「そうして、ふちにお水を一周つけて、半分に畳んでぎゅっと止めたら…」「餃子の完成だよ!」みんな真剣にタネを絞り出しています。ふちに水を上手につけて…みんな上手にできています。なんと、餃子のヒダをきれいに作っている子までいました。できた餃子をそれぞれ紙皿に入れて、運びます。最後は、ホットプレートで焼いていきます。みんなの席順通りに、それぞれの餃子を間違えないように並べました。手を洗って、餃子が焼けるのを待ちます。みんな待ち遠しいと思うけれど、ちょっとだけ時間がかかるの。その間に絵本を読んで待っていようか。選んだ絵本は『おかしになりたいピーマン』です。ピーマンはみんなに食べてもらいたくて来たのに、残念ながら嫌われ者。憧れの色んなお菓子に変身してまぎれてみますが、やっぱり見つかって追い出されてしまいます。そんなピーマンを見たゆずるくん。いつもはお弁当のピーマンを残してしまうけれど、かわいそうに思って家に連れて帰りました。そして、お母さんにお願いして、翌日のお弁当にこのピーマンを入れてもらうのです。…と、ここで、ホットプレートからなんだかいい音が聞こえてきます。ピチピチ、ジュージュー。蓋をあけてみると、香ばしいごま油のいい香り!!「わああああ!!!いい匂い!!!早く食べたーーーーい!!!」袋の中で苦手な食材をモミモミしている時のネガティブな感情は、どこかへ吹っ飛んでいってしまったようです。「裏っ返してもう少し蒸し焼きにしましょうね。」さあ、絵本の続き。お母さんに、ピーマンがおかずのお弁当を作ってもらったゆずる君は、どうなったのでしょうか?絵本の最後はこんなシーンで終わります。「ゆずる君、この顔、今どんな気持ちかな?」みんなに聞いてみると…「ピーマンをおいしい!って思ってそう!」「食べられちゃったよ!って顔してる!」「嬉しそう!」みんなにはこんな風に見えたようです。さあお待ちかね、みんなの餃子も完成です!蓋を開けると、焼きたての餃子のいい匂いがランチルーム中に広がりました♪いよいよ試食タイム。火傷に気をつけながら、お好みでお醤油をちょこっと垂らして「いただきまーーーす!!」「おーいーしーいーーー!!!!!」あっという間に食べてしまう子ども達。「もっと食べたい!」「全然足りない!」が続出です。「全然おいしい!」「なんだか、美味しすぎて嫌いじゃなくなってきた。」「もっと入れればよかったなぁ。」「もうトマトそのままでも食べられちゃうかも。」「好きになってきたよ!」「先生、もう一回餃子作りしない?」「チーズ入りの餃子もしてみたいなぁ。」「今度違う料理でも苦手なもの食べられるかやってみたいな。カレーとかどう?」「シチューもいいよね!」いい顔をしたみんなが、いろんな気持ちを言葉にしてくれました。気が付いたら「今日は大成功!!!」とワタシ、思わず大声で叫んで万歳をしていました。そしたらにじ組さんも「大成功!!!」と大きな声で続いてくれました。にじ組さんと一緒に考えて苦手な食材と向き合った最初の食育活動。でも、これは、まだまだ始まったばかりです。ここからどう続けていくか。それもまた、にじ組のみんなと考えて、ゆっくりじっくりと時間をかけて進めていく予定です。活動の続きはまたブログでご紹介いたします