ともさかりえ・吉田栄作主演で放送されたTBSドラマ、「新しい風」。本書は、後藤法子、成瀬活雄が書いた脚本を、野中圭一郎がノベライズしたものです。帯の背表紙には、たった一言“常在戦場”。この言葉については、本書を読んでいただければ分かります。

 私はドラマのほうはきちんと見られなかったけど、このノベライズを読むかぎり、なかなか熱い政治ドラマです。主演した吉田栄作が、かつて映画『国会へ行こう! 』でひょんなことから議員秘書になった学生・川合直哉を演じたことを思い出されます。映画の最後、彼はこれからどうするのかと聞かれてまっすぐ国会議事堂を指差しました。このドラマでは、彼は東都新聞政治部記者で、植木等演じる大物代議士に見込まれて政界入りするのですが、何となく川合直哉の“その後”を見ているようで懐かしい気もします。

 しかし、このドラマの主役は代議士となる夫、吉田栄作演じる新見高志ではなく、その妻・ともさかりえ演じる新見真子。「夫の転職先は永田町でした。」――ドラマのイメージソングとして使われていた「シェリーに口づけ」が流れる中、ともさかりえが映し出された予告編が思い出されます。絵本作家を夢見て、それを実現した矢先、夫が代議士になるために選挙に出馬する、と決めたら――彼女は、代議士の妻はできない、といいますが、やがて……夫の連れ子・萌との関係など、グイグイ引き込まれていきます。改めてドラマも見直したくなったし、実際の政治にも興味が持てるようになる、そんな作品です。現実の政治が混沌としている今こそ、ぜひ、多くの人に読んで欲しいし、ドラマも改めて見て欲しい。再放送、もしくはDVD化を期待したいところですが……無理かな^^;;

 なお、巻末には、主演二人とチーフプロデューサーによる座談会も付いています。