エミさんを見かけたのは

中学時代以来のことだった

エミさんは本を片手に信号待ちをしていた

そんな年ではないのに

猫背気味で少しだけ老いを感じさせた

心の病を負ったと人伝に聞いたことがある

 

同じブラスバンド部でクラリネットを担当

二つ年上だったエミさんは

知性的な大人の女性に見えた

休憩のときにはよく本を読んでいた

物静かな感じながら

その横顔は自信に満ちていた

 

信号が変わりエミさんが歩き出す

歩幅のせまい足取り

ボクは立ち止まり次の信号を待った

そして

その後ろ姿に向かい

心密かに声をかけた

 

ー鮮明に覚えてます

 確かに輝いていた

 あの頃のことを