力いっぱいに漕ぐ遊動円木
お尻がムズムズするような
怖さと楽しさに皆んなの悲鳴が上がる。
其れが嬉しくて、
もっと、もっと、
高く、高く、大きく揺れろーッ
と精一杯揺らす
無我夢中に揺らし続けると
ふーぅわりと
心が身体から離れ、わーいと
空の彼方まで飛びだしてゆく
汗びっしょりで
見上げる空に
「かぁ〜かぁ〜」と
夕日の雲のなかを烏が飛んで行きます。
「カラスが鳴くから帰ろ〜」と誰かが
言いだすと、それを合図に、
ひとり、又、ひとりと
手をふりながら消えて行ってしまいました。
私と妹と
そして顔見知りだけれど、
口もきいたこともない
2つ年上のお姉さんとで
遊動円木に座り、遊び足りない気持ちで
脚をぶらぶらさせていると
そのお姉さんは、私の耳元で
「あたし、宝物のある場所知ってるの
連れてってあげましょうか」と言い残して
小鹿のようにサッと走り去りました。
私は慌てて妹の手をとり
その子を追いかけました。
芒の絮が飛ぶ夕映の中をその子は
追われているのを
楽しんでいるように
風のように走り続けます。
「待って〜、待って〜」と叫んでも
振り向きせず
おかっぱ頭を揺らしながら走ります。
ヘトヘトになりながら置いて行っちゃ嫌と
懸命に追いかけます。
すると、その子は川原に駆け下り
暫く歩くと
「ほら、宝物はここよ」指差します。
「何処?どこ?」とあちこちに
目をこらしていると
その子は、突然、後ろから
馬乗りになり髪の毛をひっぱり
頬っぺたをつねり
どこここといわずポカポカと叩き
続けます。
「わっ」と妹が泣きだしました。
その声にくるりとおかっぱ頭を振り向け
今度は、妹の方へ向かっていきます。
なんとしたことでしょう
突然、豹に襲われた驢馬のように
体が石になって動きません。
「わんわん」なく妹の声、
大変だ、と力を振り絞り
その子の背中を思い切り
突き飛ばし遮二無二
妹の手を取り、一目散に逃げ出しました。
うぇんうぇん泣く妹を
「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と
勇気づけながら
走ります。
暗闇の土手を
その子が追い付いてきて
その手に掴まれそうな怖さ
後ろも振り向けず
足を縺れさせながら走りました。
走って走って
やっとの思いで家にたどり着くと
お婆ちゃんが
帰りの遅い私たちを心配して
門に佇んでいました。
懐に飛び込んで
わっと泣きじゃくりました。
夜空にはまんまんるお月様
光っています。
「お父さんに素直に謝って許してもらうだぁよ」
お婆ちゃんは優しく頭を撫でてくれました。
がらりと戸を開け、家に入ると
父は「来い!」と言うやいなや
私は首根っこを摘み上げられ
父の膝の上にうつ伏せにされて
ズボンを引き下ろされました。
父のごつい手が
ぱんぱんと私のお尻で
大きな音をたてます。
「だって、だって」と足をバタバタして
抗うと
「言い訳は聞かない!
暗くなる迄帰って来ないから
叩かれているんだぞ!
決まりを破った罰だ」
妹は
「お姉ちゃんについていっただけ
あたしは悪くないの、悪くないもん」と
ぴょんぴょんと跳ねて逃げ回り
母の後ろに隠れてしまいました。
「もう、そんくらにして許してやんなさい」
とお婆ちゃんが助けてくれました。
お尻は赤くなり、
その赤くなったお尻を見ては
涙が溢れるのです。
母が「いつまでも泣いていないで
さぁー、ご飯にしようね。来なさい」
と私の肩を抱いてくれました。
卓袱台の前に座ると
温かい白いご飯がピカピカと輝いています。
焼いたお魚の腹がキラキラと光っています
煮豆がふくふくと輝いています。
私は目を擦りました。
見渡すとお婆ちゃんの白髪が
キラキラとしています。
お母さんの笑顔がふわふわとひらいて
います。
たった今、帰ってきた猫の玉の鈴がチリンと光ります。
わぁー、私の頭の中の宝物より
ピカピカだ❗️
http://www.yumekuraya.com
042-808-7250











