ゆめこシリーズ「空を飛べなかったツバメ」「ほっこりするね」「想い出の走馬燈」の著者のふじもとじゅんこです。
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ゆめこの初恋物語
文・ふじもとじゅんこ
《第27話》
のっぽは、ゆめこの心の支え
のっぽに心の内を話すゆめこ
ゆめこは48才の時、二度ものっぽに会うことができました。
ゆめこは許される事なら、もっともっと、のっぽに会いたいと思っていました。でものっぽから電話もメールもない日々が長く長く続いていきました。
✉
[送信]
のっぽちゃんへ
のっぽちゃんと会えない日が長く続くとすごく不安になるの
食欲もなくなるの
のっぽちゃんの傍にいられたら私は自分らしくいられるんだよ
のっぽちゃんに会いたいな 自分のことばかり言ってる自分は我儘だよね 分かっていても我儘がでるの いつも夜空の星に向かって「のっぽちゃんに会えますように!」ってお願いしてるの 今日もお願いしたよ
のっぽちゃんお仕事がんばってね のっぽちゃん大好きだよ
またのっぽちゃんに会えると信じて待ってる
ゆめこ
溜まりかねて、のっぽに電話を掛けるゆめこ
引っ越しをしてから約7か月が経ちました。
のっぽから電話もメールもない日々がさらに続いていました。
そんなある日、溜まりかねたゆめこはのっぽの声が聞きたくて、のっぽに電話を掛けました。
夜の11時を回った頃でした。
すると、電話が留守番電話に繋がったのです。ゆめこは留守番電話に向かって身の周りで起こる様々なことをのっぽに話しました。そして、ゆめこの心の内をのっぽに聞いてもらいました。
📞『のっぽちゃん ゆめこです
お母さんもお姉さんも私のことですぐ怒るんだよ
自立しないで家に居るから怒るんだよ
今の実家の家は9年前にお姉さんとお姉さんの旦那さんが新築した家なの だから私が住むのはおかしいと思っているんだよ
人は何で怒るのかな
そう考えた時、きっと自分の思い通りにならないからだよね
私はどこに居ても人の思い通りに動かないみたいなんだよね
だから怒られるんだよね
でも、そんな自分をどうにも出来なくて不安で仕方がないの
子どもたちには絶対に迷惑かけたくない私だから、この家以外に行くところがないの だから不安だらけ
いったい私の居場所はどこなのかなって考えちゃうの
‥‥‥
私は我儘だからかな
自分らしく生きたいだけなのにそれが我儘なのかな
苦しいよ
怒らないでほしいのに人は怒るんだよ
ほんわか笑って話したいのに怒るんだよ
いろんな言葉は私を悲しくさせるの
人は何で怒るのかな
のっぽちゃん 私は悲しい
新たな道を歩み出したばっかりなのに、また同じことの繰り返しなの
私の心は薄い薄いガラスみたい
誰かに頼られると壊れてしまいそうになるの
それを知っている子どもたちは頼りない私を頼ったりしなくて優しくしてくれるんだよ
この前、息子夫婦がワンホールのチーズケーキを実家に持って来てくれたの
でもその時、私はお母さんと上手くコミュニケーションが取れてなくてギスギスしてたから子どもたちに優しい言葉をかけられなかったの 「家に上がって皆でケーキを食べよか」と母親らしいことが言えなかったの だから玄関先で子どもたちとちょこっと話しただけで子どもたちは家に帰っていったの お母さんと上手くいってないことを私は子どもたちに悟られたくなかったんだよね
それとかね、子どもたちにまだまだ優しくされたことがあったよ
愛犬ラブの年に一回の狂犬病の予防注射をする時期が近づいたら車でラブを動物病院に連れて行ってくれて、帰りに新しい真っ赤なリードやドッグフードをいっぱい息子夫婦は買ってきてくれたり、「俺と○○ちゃんからやで」って書いた封筒をくれた時があって、その封筒の中を子どもたちが帰ってから見たら、お金が一万円も入ってたんだよ
子どもたちは生活があるのに、一生懸命働いたお金を私に分けてくれたんだよ
娘夫婦も実家に顔を出してくれたこともあったの
子どもたちはすごく優しいでしょ
でもね お母さんもお姉さんたちも本当は優しいんだよ
私にしっかりしてもらいたいだけで、いろいろ言ってくるのは分かってるから‥ でもどうにもできないんだよ
私はできないことが多いから家族から我儘の部類にされてるのかもしれないよ
私は誰かに頼られると壊れてしまいそうになるんだよ
誰かのために頑張ることが今は出来ないんだよ
自分のことだけでいっぱいいっぱいなんだよ
きっと これまで頑張り過ぎたせいだと思うの
そんな私はお母さんの心に寄り添う余裕がなくて世間話すらも上手にできないの
さち姉さんはある日、私に「親○○もん!」って言ったの お姉さんは私にしっかりしてもらいたいから、わざとキツイ言葉を選んだのかもしれないけれど、でもそんなことを言われて私は家族から疎外されてるって思った まるで邪魔者みたいに思われてるって思ったの
‥‥
さち姉さんはイライラしながら私に「ふつうにしゃべりなさい!」って怒ったりするんだよ
お母さんも私が年相応の喋り方をしないと「娘の子みたいなこと言うもんやない もうすぐ50になるのに」って情けない顏で怒ったりするの
悲しかった そう言われて悲しかった
私は自分らしく生きると空回りばっかり
お母さんのこと大好きなのに
お姉さんのことも大好きなのに
お姉さんもお母さんも、いつも私のことでイライラしてる
でもどうにもできないんだよ
のっぽちゃんに会いたいよ
今の私にはのっぽちゃんと何でもない話をする時間が必要なんだよ だって何でもない話をしている時がとっても幸せに感じるから のっぽちゃんと一緒にいると心が温かくなるの
のっぽちゃんに会いたいな
のっぽちゃんに会いたいな』
すると急に電話が繋がりました
📞「遅いわぁ~」
『のっぽちゃん?』
「あぁ」
『のっぽちゃんに会いたい!』
「・・・・・」
『私 のっぽちゃんの住所が知りたい のっぽちゃん教えて‼』
「言えない」
のっぽは息遣いを少し荒くして涙声になっていました。
のっぽは、ゆめこが22歳のとき、結婚したら田園風景の広がる土地に家を建てて住みたいと言ったから、ゆめこと離れ離れになってから二人で選んで買った土地に、二人で選んだモデルハウスの家を建てて一人で住んでいたのです。ゆめこの記憶が完全に戻ったら、きっと桜木市桃町の土地を覚えていて自分を訪ねて来ると、のっぽは微かな望みをずっと持っていたのです。だから、ゆめこから住所を聞かれたとき涙が溢れたのです。
それともう一つの理由は、のっぽが癌を患っていたのです。ゆめことの未来に自分はいないと悟っていたからです。
『のっぽちゃん 大丈夫?』
「あぁ」
『私ね 今、仕事頑張ってるよ
のっぽちゃんが仕事しないとダメだって言ったから仕事頑張ってるの 幼なじみの優しいお友達がね 保育園の調理の仕事してみないかって誘ってくれたから保育園で働けるようになったの
職場の人はみんないい人たちばっかりだよ
今日ね 今日ね ドジしちゃった
包丁で指を切っちゃったの
今、指に包帯巻いてるの
‥‥
のっぽちゃんに会いたいな』
「‥‥
じゃぁ 遅いから一旦 電話切るよ」
『うん
おやすみなさい』
「おやすみ」
《28話》につづく
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27話「ゆめこの初恋物語」のイメージソング5曲
HY…
♪あなた
椎名恵さん…
♪LOVE IS ALL~愛を聴かせて
Kiroro…
♪長い間
コブクロ…
♪桜
ORANGE RANGE…
♪キズナ
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