②本の装丁(子供向け)


巌谷小波の「お伽草紙 動物之巻」のご紹介も本日が最後となります。


巌谷小波は明治、大正期に活躍した作家、児童文学者です。その作品の多くは彼自身が編集する博文館発行の雑誌「少年世界」や「少女世界」などに掲載されました。夢二はそういった雑誌に挿絵を描いていましたので二人に関係があったのでしょう。


この本に限ったことではありませんが、装丁は作家の文章が先にあり、それに合わせて絵が描かれます。そういったことを踏まえてもう一度この本を見てみてください。





大風が吹いて、木の葉や帽子が飛びました。

犬の頭が飛んで鶏の首へ付き、

鶏の頭が犬の首へ付きました。



そうしたら、犬は「コッケコオドウ」と啼き、

鶏は「ワンワン」となきました。


おつかひ

この犬は口に薔薇の花をくわへ、首に手紙をつけて走ってゆきます。

この犬は何処へゆくのでせう。

そしてこの手紙には何が書いてあるのでせう。


さあさああめがふってきた。

はやくおうちへかへりましよ。


ぽつりぽつりとふるあめはのにもやまにもふるけれど


わたしはちつともぬれませぬ



熊吉は、もう大人になつたから、母様に新しい洋服や帽子や

靴を買って頂きました。

ある日それを着て町へ行きました。

町の子供たちはみんな熊吉を見て笑ひました。

慣れない靴は足をかむし、洋服は窮屈だし、

熊吉は泣き出し


それからはもう決して洋服を着て

町へは出ませんでした。



「つむさん、君は随分歩くのにのろいねえ。

一生掛つても君は大阪までも行けないね」


蝸牛(かたつむり)

「これでも十四日と八時間かかりや一哩(イチマイル)歩くよ。

さっき君が見て居るうちに、これでも三尺ほど歩いたよ。

君はその間に何をしたい。」


「なるほどね」