①雑誌―生活雑誌
「新婦人」 大正9年 5月号

これは雑誌「新婦人」(大正9年創刊)の口絵に使われた夢二の絵です。絵というと正面を向いたものが多く描かれます。口絵に使うようなものならなおさらです。しかしこの絵の少女は後姿・・・。この絵を見た読者は絵の中の人物になりきって、少女と同じ視点で風景を眺めたことでしょう。この構図は当時斬新さを感じさせたに違いありません。




「主婦の友」 大正14年 7月号

生活雑誌の最後に、「主婦の友」(大正11年創刊)に掲載された夢二の記事をご紹介します。


旅で見た女の印象(六)

時。ある夏の明るい月夜。

所。北国のある温泉場の屋上庭園。

女。あなたはどうしてそんな男と結婚したかお訊ねなさ

  るでせう。あたくしはつきり思出せませんわ。だつて

  じぶんの意思ではなかつたんですもの。

男。でも感情を持たずには、どんな  でも出来ないは

  ずですが。

女。えゝ、それはあたくしだつてあの男のものになると

  いふ心の準備はしましたわ。何かしら、異性に対す

  る夢を持つてゐましたのですから。自分は選択なし

  にその男を夢の対象にしたのですわ、きつと。

男。のんきですね。

女。もう昔のことですわ。なんて今晩は月が綺麗でせ

  う。

男。さう言はれてあなたの顔から月の方へ眼を外すほ

  ど私は子供ではありませんよ。

女。まあ。

竹久夢二

明日は文学雑誌のご紹介を致します。