②本の装丁

 装丁は書き手の心がたくさん詰まった本に美しい着物を着せる仕事です。書き手と読み手を結ぶ大切な仕事でもあります。夢二は装丁の仕事にも興味を持ってその才能を惜しみなく発揮しました。そうした仕事は芸術家気取りの人には軽く見られたものですが、夢二は手を抜くことなく心を込めて取り組んだ姿勢がそこによく出ています。


 夢二自身の本の装丁は処女出版「夢二画集春の巻」(1909年12月15日)から最後の出版「抒情カット図案集」(1930年9月1日)まで計57冊を世に出しています。


                 夢二画集(左から)春 夏 秋 冬



 その他に、夢二以外の著書、119人から依頼された著書の装丁が259冊にのぼります。その人の中には松井須磨子、正宗白鳥、堀内敬三、田山花袋、西出朝風、吉井勇、谷崎潤一郎、島村抱月、小栗風葉、巌谷小波などその当時の各界のそうそうたる人たちがいました。そのことから夢二が装丁という分野でも引っ張りだこの人気があったことがよくわかります。人から頼まれた最初の装丁は島村抱月編『少年文庫 壱之巻』(1906年11月10日)でした。最後の装丁は長田幹彦の「祇園囃子」(1934年4月20日)で、夢二は長田幹彦の装丁を最も多く手掛け、その数42冊に上ります。

島村抱月 編『少年文庫 壱之巻』(1906年11月10日)

     
 長田幹彦『祇園囃子』(1934年4月20日)


明日も引き続き本の装丁についてお話します。


館長 木暮 享