FMWをつくった男たち』を読みました



元週プロの小島さんの本。初期FMWのお話。


だけどこの本を作るにあたり大仁田厚には直接取材はしないで、その周辺の人たちに取材をして輪郭を作るというルールを決めています。それでもこの本を読むと否応にも大仁田さんの凄さが浮かび上がってきますし、初期FMWがいかに革命的だったかも書かれています。初期に絞られていてもとても面白く、その頃の映像をビデオなりでしか見れなかった自分もあれこれと脳内に映像が浮かんできます。大仁田さんには取材をしないルールでも、大仁田さんの輪郭が浮かんでくる。この強度が凄まじいよ


これは僕の読後の感想で感じたことです。

これを読んで"インディー"というものをどう定義したらよいのか、僕なりに一つ分かったことがありました。


インディーの一つの要素に、"一人何役もやる"ということがあるのだと感じました。


この本の中にFMWでデビューした数選手がレフェリーも兼務していた上でのデビューだったことが描かれています。


その他にもこの本の主人公であるFMWのスタッフも当然のように沢山の仕事を兼務している。


大仁田さんが若いスタッフを集めて手作りのカレーを振る舞い、メーンイベントだけ決まっている対戦カードに対してそれ以外のアンダーカードのアイディアを募るシーンは象徴的でした。とにかくなんでもやらせてみるし、誰からのアイディアも募る。それが初期FMWの原動力であり、電流爆破デスマッチの発明に繋がっていることが書かれていました。



これを読みながら思い出したのは、昨年末に大仁田さんが僕に対して「今成は何でもやるよなあ、コイツは編集もやるんだよ」と言ってくれたことです。


僕はそれを聞いて、凄まじい安堵感と肯定感に包まれました。この業界で遮二無二働いてきました。テレ玉のDDT中継テレビ番組納品は全て自分で編集をし、ナレーションも自分でやりました。実に"インディー"だっだと思いますし、ガンプロでもまあまあ何でもやっていると思います。今、まさに自分のインタビュー映像を自分で編集して、YouTubeに上げようとしてます。自作自演上等ですよ。だって兼任だし、それが私の生きる道だもの。


とは言え少ないギャラの中で、好きだけどそう生きることは時に辛いと感じることも決して少なくないと思います。


それでも大仁田さんが「オールマイティが一番だよ」と僕に言ってくれたことや、この本で書かれているFMWのお話が繋がったような感じがしました。




今年のサイバーファイトフェスで高木社長が「DDTはインディー」と語られていました。母体となる親会社の規模感からすればインディーというイメージではないはずなのですが、あえてインディーと言ったことには"インディーの精神性を忘れてはいけない"というメッセージが込められていたかと思います。が、実際に"一人何役もやる"という観点で見れば、DDTの選手はリングを選手が手作りしていたり、グッズの梱包作業などもやっていたりしています。その姿や姿勢は十分にインディーと言えると思いました。そういうインディーな文化を選手たちは尊重して、今も行っているように思えます。社長はメジャー的に存在するノアとの比較という意味でもあえてそう伝えたようにも思えます。確かにノアの選手で何か別の仕事を兼任しているイメージはないかもしれません。


そして今もなお映像班兼任で、もう何屋か分からなくなっている今成夢人はまさに現在進行形のインディーの形を象徴的に生きている、存在出来ているのではないかとさえ思えてきました。


私はFMWを直接観れたことがないのですが、99年ごろの新日プロに侵攻を始めた頃の大仁田劇場真っ只中の大仁田厚自主興行はよく後楽園ホールに観に行っていましたし、名称を変えてプロレスリングX旗揚げ戦、FMW再旗揚げ戦と名前だけ変わった大仁田厚自主興行も観に行っていました。


パンディータが第一試合で出ていたこの大仁田厚自主興行ではこの本で書かれていたFMW初期のセルフリメイクであったことが今考えると分かります。そういう意味ではFMW初期は見れていなくとも、何度も繰り返しては現れる"FMWのようなもの"を目撃出来ていましたし、昨年7月に旗揚げされたFMWEでは遂に旗揚げ戦の第一試合に出場するに至りました。


大仁田厚を取材しないと決めた本でも、大仁田厚の精神性、FMWの特異性、そしてインディーのフロンティアスピリッツを垣間見ました。


そして今成夢人は徹頭徹尾、インディーの精神で出来上がったレスラーなのだと感じました。


その他のエピソードも面白かったし、何よりFMWがあって今のプロレス界があると感じます。


今、こうしてプロレスが出来て、工藤めぐみさんにも会えたり、大仁田さんとも試合が出来たり。こう言ってはなんですが、僕にもFMWのなんたるかが引き継がれているような気がしてしまうんですね。





この本を読んで、もっと大仁田厚が好きになったし、もっとFMWが好きになりました。



そういえば大仁田さんはプロレス名鑑の好きな食べ物の項目にカレー、吉牛といつもあって。


やっぱりFMWスタッフにカレーを振る舞って、カレーを食べながらみんなで対戦カードを考えるのは異様に映画的なシーンだなあと興奮しました。ジョニー・トーの映画みたい!