哭悲を観てきた。台湾ホラー。

パンデミックの感染で、人間の性欲や暴力性が抑えられないような状態になる人間がどんどん増えていくというやつ。


凄まじいゴア描写と、やたらと詰まった画角が閉塞感とこの世の終わり感を増していました。血糊の量とか、顔面破壊描写みたいなのは徹底した拘りを感じた。「ここを拘っています!」みたいな拘りが妙に痛快。電車のシーンが一つのハイライト。中年サラリーマンが主人公の一人の女性に話しかけて、セクハラだと言われて逆上していく。映画の中で一つの象徴的な存在になっていく。こうした中年サラリーマンの潜在的な感情が恐怖感と直結するのはよくわかります。この中年サラリーマンの姿はステレオタイプ的に描かれているようにも思えるけど、この映画のヒールとしては強烈なビジュアルだった。普通の、市井の人が怖い。反転する怖さ。


オープニングの台湾の牧歌的な風景はアジアの色気が漂っていて大変良き。後半になるとこのロケーションが減ってしまうのが惜しい感じが個人的にはしました。台湾映画はロケーションだけで謎の色気があります。


近年のコロナのあれこれでこうしたウイルスを題材にしたものはより身近に感じられます。防護服とか、マスクとか、ワクチンとかそういうモチーフは誰しもが身近なものになっていると感じます。


いわゆるゾンビのような状態とは違う、ちゃんと喋れるし、意志もあるという状態の感染者。噛まれたら感染するのか、しないのかの説明がない状態でたしたので、割とそこは雰囲気で見ていました。ただゾンビのようなルールが明示化されていないと一つ色気のようなものが下がるように感じられました。そういう意味ではルールがある中で品のようなものが生まれるのかもしれない。


終始、ノイジーなサウンド設計でテンションがずっと高いのですが、終盤は刺激に慣れてきてしまう感覚があったので、心の置き所が少し難しかった。静と動の中では動きっぱなしなので、もう少し静かな時間を挟んでも怖さは引き立てられたのではないかと感じました。この辺りは好みだと思いました。総じてチャレンジ精神とサービス精神満載な作品であり、宣伝もしやすいビジュアルなど、一つ映画のあるべき姿・形をした作品であることは間違いないなと思いました。


顔面破壊描写などは『スキャナーズ』の影響がモロに出ていて面白かった。たぶん監督はスキャナーズが好きではないかと思います。


アジアから野心的ない作品が話題となって公開される。とても面白く、いい流れのように感じます。


みんながアメリカやヨーロッパに走るのですが、わしは最近はアジアのマーケットがいいなあと思ってます。飯も美味いし。