19日、日曜日。ZERO1後楽園ホール大会のメーンイベントで阿部史典選手のジュニア2冠王座に挑戦してきました。



晋さん欠場による代打での立候補。試合当日までの時間も短く、気持ちの整理や煽るための時間も確保することもままならず、当日を迎えました。とは言え、大谷晋二郎の代打という気持ち以上に、もう阿部選手と闘えるということへの前のめりな気持ちが半端なかったです。


阿部選手はBASARAに参戦していて、僕は撮影で現場に行くことが多かった。澤さんの幻影や魂を重ねられそうな彼の姿もそうですが、何より彼自身がとても魅力的だった。遊びのある姿勢や、自身が掲げる「格闘探偵」というフレーズの通り、どんな闘いやステージにもフラットな視点で貪欲にそして楽しんで挑んでいく様にグッときた。各団体で引っ張り凧なのは当然で、観ている人に何かを残してくれるレスラーです。僕は彼のファンになっていました。


そんな阿部選手とどこかで試合が出来たらいいなあという話をお互いにしたことがあったと記憶しています。そうは思っていても、そういう機運ってなかなか作りづらかったりもします。


その間、ちょいちょい会場で会ったりはするという関係は続いていました。あるとき、阿部が僕のブログの映画の感想を見て、その映画は必ず見るようにしていると言ってきたことがありました。私のブログはたまに私が見た映画の熱量が半端なかったり、誰かと話したい気分になった時に、誰かに話しかけるように書き殴っているわけですが、めちゃくちゃアクセス数が少ないわけです。僕が映画を観たこととか、僕が映画を観るということに興味を抱いていくれている人そのものが少ない中、阿部はこのブログを気にしてくれているわけです。ある日、僕がボロクソに酷評している映画の感想を見て、「あの映画はなんですか!?」と連絡をくれたことがありました。僕は映画のタイトルは伏せてブログに感想を書いていたのですが、阿部には連絡を入れて「時間の無駄だから見なくていいよ」と返事をしました。


そういう変な関係というか、独特なやりとりが僕と阿部の間にはありました。それはは阿部が澤さんの教えを大事にしていることを裏付けることだと僕は感じました。沢山練習するのはもちろんのこと、いい映画もいっぱい見ることが大事だと澤さんが言っていると、何かの記事で読んだことがあります。阿部はその教えの流れを大事にしいて今を生きているんだろうなと僕は感じていました。(最近のガンプロの興行タイトルで『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』というマニアックな映画タイトルに気づいてくれたのは澤さんと村田さんだけ!)


僕が映像班として入ってまもなく、澤さんを撮る機会も少しだけありました。チーム変態大社長としてDDTやユニオンに上がっていて。高木社長と澤さんのタッグチームも実に不思議な、それでいて素敵なチームでした。僕は高木さんにプロレスラーにしてもらったので、高木さんの系譜である僕と、澤さんの弟子である阿部という、変態大社長のそれぞれの弟子みたいな見方も出来たのかもしれません。そういう見方を煽る余裕すらないままに当日を迎えましたよ。ええ。


そんなこんなで、ガンプロでもBASARAでもないZERO1のリング、しかも後楽園ホールのメーンイベントで彼と戦うことになったというね。

しかも私はシングルで、後楽園ホールのメーンは初ですよ。それをそういう実績のない私に任せてくれるZERO1と晋さんの想いに応えなきゃ嘘だろうという気持ちはもちろんありました。


試合はホットジャパンのメンバーだけでなく、ガンプロの人たちにもきてもらいました。もちろん一週間後のガンプロ後楽園大会に向けて士気を上げたり、チケットを売ってもらえたらという意味もあってのことですが、ZERO1の僕も見てもらいたいという気持ちがありました。僕は昨年からZERO1に参戦するようになり、そこからホットジャパン、晋さんとの流れを作りました。そしてそれをガンプロにも持ち込みました。ZERO1の僕はいわば外伝ではありますが、もうガンプロの人たちにとっても関係なくはない話になったと思っています。だからこの大一番に来てもらえたらと思いました。10名くらいのセコンドは心強かったですね。対する阿部は誰もセコンドについていないという、これまた凄い。



試合をしながら、阿部の強さをもうひしひしと感じました。彼の攻撃一つ、一つにこちらの毛穴やアドレナリンがドバドバと開いていく感じ。開きに来ているし、開かれてきているとも感じました。阿部が「情念で打ってこいやあ」と凄まじい打撃をしてきました。俺も「情念!バトラーツ!」と絶叫していて打ち返していました。 


自分でも意味はわかりません。でもバトラーツの人たちが感じてたサムシングってきっとこういうことだったんじゃないかというような、そんな感覚。石川雄規さんが「情念」という言葉に拘っていたことを、バトラーツの系譜にいる阿部が今も大切にし、それをぶつけにきているのだと。私はそれに精一杯応えるしかありませんでした。気がつけば無我夢中、フラフラで、彼のお卍固めに捕獲されていました。  






彼はマイクを持ち、ZERO1ジュニアにハッパをかけました。それは自分自身にも向けているものでもあるでしょう。厳しい状況だからこそ、俺と今成という他団体同士でシングルのメーンが行われているという事実、その深刻な事態というものを伝えたかったのだと思います。ですが、その後、彼は私にマイクで語りかけました。私はその言葉に安堵の気持ちに包まれながらも、彼への気持ちを今日まで持ち続けて今日を迎えられたことに気持ちが溢れ出ました。ガンプロでもなく、BASARSAでもない、ZERO1であったことへの必然性をとても感じました。マイクをトスされて、私はお客さんに聞き取れないマイクをしてしまいました。そこは週プロモバイルでも文字起こしされていなかったので、よっぽど聞き取りづらかったはずですが。「俺のブログ見て、映画見たりしやがって、この野郎」的な全くもって前後の文脈を無視したことを第一声で喋っていました。それは聞き取りづらいし、意味が分からないですよね。でも僕にとってそういう一瞬、一瞬を積み重ねて、彼とこのリングで対決出来たことが何よりもレスラー冥利に尽きる瞬間でした。


彼の「格闘探偵」の中に私がいたのなら嬉しい。格闘を探求する中に、私が一ページ加わったのなら嬉しい。彼もまた探求し続けるだろう。そして私も彼とは視点も取り組みも異なるだろうが、自分なりに探求し続けたい。それはあまりにいろんな答えがあり、同時に答えがなさすぎて、面白いものだからだと思います。


敗者である私に場を締める時間を与えてくれました。その器量を含めた全てにおいて、彼が上回っている。そう感じつつ、また彼を追いかける、超えたいという目標が生まれました。ZERO1ジュニア2冠も諦めません。絶対に獲ります。



セコンドにいたホットジャパン、ガンプロの皆さんありがとう。ZERO1の皆さん、晋さんありがとう。

阿部、ありがとう。一生忘れられない日になりました。


今成、この日を糧に、これからもまだまだ頑張ります。

ありがとうございました。ナーシャ!