あらすじ:
2018年に米コロラド州で起こった殺人事件を題材にしたドキュメンタリー。当時妊娠15週目だった34歳の母親シャノン・ワッツと、彼女の3歳と4歳の娘が殺された事件の顛末を、警察の記録映像をはじめとした関係者から入手した映像をそのまま使用して描いた。Netflixで2020年9月30日から配信。


たまたまNetflixで観ていて、ダントツで面白かった。犯罪ドキュメンタリー。
面白かったというのは語弊があるけど、日本ではまずなかなか作られないだろうなというのと、これが作れるアメリカ凄えなっていうのも込みで。

まず事件の発生から、現場に立ち入る警察、犯人と思われる人物の取り調べ、嘘発見機にかける様子、と生々しい"今、動いている"フッテージがこれでもかと使用されていること。終盤には裁判の様子も全部残っていて、具体的に殺害する映像以外のフッテージが現実に残っていて、それらが使用されて映画になっているということにめちゃくちゃ驚かされる。本当に殺すところ以外はほとんど映像として残っている。

それ以外の映像はSNSに上がっていた映像や写真をふんだんに使っており、十分に事件の説明、犯人の動機、サスペンスを物語るのに有効打として使用されているのだ。

さらにショートメールによる会話のやりとりも、サスペンス性を高めるのに一役買っていて、映画全編を通しての異様なまでの生々しさを加速させていく。

この映画を観て思うのは「映像-映画」というものがまた時代を変えて、新たなフェーズに入りかけているということです。警察が記録用に回した犯行現場の様子、後に犯人と分かる男がつく嘘、取り調べの防犯カメラの映像。映像の解像度も、音の収録レベルも低いけど、もう撮れてしまえばそれは映画になりうる一つの要素になるんだなということです。そんなのは十分に分かり切っていることですが、それでもこうして殺害の映像以外の映像はほとんど見られるわけですからね。

それにしてもこの事件のお粗末さというか、犯人のイクメン夫のしょうもなさというか。殺害理由の程度の低さが非常に物悲しいです。何故殺さなくてはいけなかったのか? 結局のところバカだったとしか言いようがないその顛末もまたガツンときます。この理由そのものが汎用性が高くて、おそらくそこらじゅうにいる市井の人たちが常日頃から抱えているであろう感情の一つに過ぎないのも。

そういう意味でもやっぱり強烈な一本であるのは間違いないと個人的には思いまして、SNSに上がっている無数の映像も映画的な何かって常に帯びているんだよなあと思わされるという意味でも、見ていて損はない作品ではないでしょうか。