日曜日はZERO1で試合だった。
天下一Jrという歴史と伝統のあるトーナメントにエントリー。それだけでなく、ZERO1に初参戦。普段なかなか他団体に出る機会があまりない僕が、他団体の人から必要とされていることが嬉しくてたまらなく、そして気持ちのエンジンが更に燃え上がるような気持ちになった。






クリスタルボールを見つける動画には、僕の気持ちが表現されている。
仕事をして、映画を見て、ジムに行って、川を走って、そんな日常を僕はずっと繰り返している。それが正解か不正解かは別として、そういうルーティンを生きている。言い換えればコツコツと生きている。そんな中にクリスタルボールを見つけた。コツコツと生きていた自分に突然現れたチャンスだった。

大谷さんとの試合は物凄い集中力で臨めた。試合に向かう準備も気合いもバッチリだったし、シンプルに自分の物語や、自分の素直な気持ちでリングに上がれること、それを許容してくれるZERO1にも感謝の気持ちでいっぱいだった。こうしてプロレスラーとしていられること、臨めることは僕にとって心身共に健康的な気持ちにさせてくれる。自然に溢れ出るアドレナリンは生きる糧になるし、僕にはこういうことが必要不可欠だと改めて思わせてくれた。

あっという間の20分だった。大谷さんの大きなカラダは打っても打っても倒れない。だから全力で、むき出しで、自分の気持ちで立ち向かった。それでもビクともしない大谷さんは僕が思うプロレスの熱さ、懐の深さをそのまま表現しているかのようでもあった。

大谷さんもZERO1の代表選手としてここのところ大変だったであろうことは想像に難くない。所属選手の離脱というニュース。このコロナ禍での運営がどれだけ大変だったのか。僕も想像することしか出来ないが、それは辛くてたまらないはずだ。だからこそのプロレス。そんな状況下でも立ち上がるということを見せる。それこそが大谷さんの生きる道なんだと言わんばかりに、大谷さんはリングに上がったように思える。

それは僕とて同じ。コロナ禍での仕事は大変だった。逆に忙しくなるという不思議な期間だった。映像配信、映像制作にシフトが置かれることで、僕は徹夜で仕事をしたり、失敗出来ないという毎日から常に緊張感を持って生きなくてはいけなかった。映像の仕事は好きでやっているはずだったが、どうして果たして本当に好きでやれているのかどうか、自分自身が疑問に思うようなことも何度もあった。そこに自分の表現は不在だったように思える。親団体が生きるために、僕は必死になった。サバイブするための映像作りだった。そんな中、逆に挑戦的になるレスラーたちもいて、その人たちのために働いた。だが、僕自身は少し寂しくなった。自分の表現が出来ているかどうかは疑問になり、ジェラシーも湧いた。どう転がっても僕はプロレスラーであり、映像作家だった。自分の表現が出来ないことは苦しい。しかし生きるためには、生き残るためには頑張らないといけない。言ったらいつもそうだったのかもしれない。10年ずっとそうだったかもしれない。決してスッキリする感情が残ったわけではないが、僕は汗水垂らして働いた。このコロナ禍を乗り越えるために、頑張ったと胸を張って言える。

だからこそ、この溜まりに溜まった感情を背負ってリングに上がれることは嬉しかった。大谷さんとのシングルマッチ。ZERO1のリング。自分の物語。大谷さんの気持ち。全部が四角いリングに濃縮されるからだ。

あっという間の20分。延長戦の2カウントフォールマッチで僕は勝利することができた。お客さんもビックリしていたが、一番驚いていたのは自分だった。自分がよくわかっていないまま、困惑しながらも、起こった出来事を受け止めて、リングを後にした。





携帯サイトで大谷さんのコメントを読んだ。自分なりに要約すると、大谷さんが僕と闘えてよかったという気持ちを語ってくれていた。POISONの曲が頭にずっと流れていて、今成にぴったりの曲だと。それが何度も頭に流れていると大谷さんは言っていた。今成の前にいると熱くなるというようなことも言ってくれていた。その相手に選ばれたということなのだろうか。

こんなに嬉しいことはない。自分が尊敬してやまない選手、自分が何度も感動をもらっていた人に、そう言ってもらえたこと、その言葉を出してくれた試合が出来たことは、僕にとっての財産だ。きっとこの先辛いことがあっても、この20分の時間、空間、感情を思い出せば、何度だって立ち上がれるような気がする。そういう心の財産をこの試合で残したのだと僕は数日経って実感している。

リングを降りれば日常が待っている。あの熱量の余韻をかき消すように、日常が迫ってくる。僕に付随する日常は、僕が放った熱量や記憶を気にはとめない。働かないといけないし、矛盾や理不尽とも戦っていかないといけない。またそういう日常がすぐにやってきた。なんだよ、、と思う。日常は嫌なことが多い。気が滅入ることが多い。スッキリしないことが多い。モヤモヤもする。だからまたリングに向かいたいと思う。自分を表現したいと思う。そういう繰り返しをして生きてる。今回のZERO1はそんな僕に与えてくれたとんでもないギフト、贈り物だった。コツコツ取り組んでいる自分を肯定してくれたのはZERO1の皆さんだったような気がしてならない。だからこそ、僕もそれに応えたいし、また物語を作っていきたいと思う。

出来事はあっという間に忘れられる。僕が思い込んでいる物語の強度は、他者から見ればどうでもいいものかもしれない。でも僕は現時点で、自分にしか賭けることは出来なかった。自分にしか感情移入が出来なかった。自分を主人公にして生きることしか出来なかった。だからこそ、この一戦は僕にとっては財産になったと思う。熱量が瞬間最大風速を記録したような、そんな1日を過ごした。それを忘れないためにも、熱量が消えないうちに書き綴った。俺は俺自身をどうでもいいとは思わない。"こんな時だからこそ"の今成夢人をリングに向かわせてくれたZERO1、天下一Jr、それを許してくれた仲間たちに感謝したいと思う。つくづくPOISONだなと思う日常と闘いながら、またリングに上がりたい。これは僕の永遠のテーマなのだと気づかせてくれた1日。応援ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いします。