第2回目のぽちゃじょ。
僕は主催者のワガママとして対戦相手に竹下選手を指名させていただきました。

竹下幸之介選手。2012年の8月18日DDTの日本武道館大会でデビューしました。
2012年の日本武道館といえば、僕が最もボロボロだった日だったと記憶しています。

DDT映像班に入社して1年とちょい。AD業務でほぼ忙殺される毎日。今思えばなんでプロレス団体で働いているのかも、なんでDDTにいるのかも全然よくわかってなかったように思えます。中京テレビを辞めて、路頭に迷ってた僕に声をかけてくれたDDT。ただ流されるがままに、流れるままにそこに収まり、そこで仕事をしていました。その日はとにかくボロボロで、興行が開始しても、まだ当日流すVTRをバックステージで編集しているという具合でした。だから僕はその日、興行をしたという実感が全然ありません。なんでかといえば、武道館のバックステージでiMacとずっと睨めっこをしていたから。だから武道館のアリーナにいた記憶が僕はほとんどないのです。

大会のVTRはほとんどがAD業務でしたので、先輩ディレクターのサポートがほとんどでした。ですが、唯一一本だけ最初から最後までディレクターとして作ったのが、この日デビューした竹下幸之介選手の煽りVTRでした。煽りVの曲はサカナクションの「ルーキー」を使いました。すごいルーキーがデビューするぞ、、!という意気込みというか、そのタイトルのキーワードだけで選んだような気がします。今考えるとなかなか浅はかな動機ではありますが。。

竹下選手を新木場1stRingでインタビューしました。現役高校生だから夏休みの時間を利用して、ビアガーデンプロレスの期間に彼はプロレスの練習をしていました

インタビューではハキハキと答える彼の姿が印象でした。「プロレスラーになるために生まれてきた」と彼は言いました。17歳とは思えない立派な受け応え。

先輩ディレクターに「竹下は陸上で成績を残しているから、陸上の素材をもらってVTRに入れなさい。」と言われ、彼の陸上競技の映像を入れました。また、実際に走高跳びをするシーンも撮らせてもらいました。

ただ、当時の先輩ディレクターはとにかくむちゃくちゃな人で、「普通に走高跳びしても面白くないだろ。キリンとか並ばせて、どれだけ高く跳べているのか検証するVTRを作れ」と言われました。

その瞬間に頭がキリンでいっぱいになりました。
どうしたら陸上競技場にキリンを用意できるのだろうか。ということで、すっかり頭がいっぱいになってしまったのです。

結局キリンは用意出来ずに、竹下選手には普通に走高跳びを飛んでもらいました。
ただ飛んでもらっておいて申し訳ないのですが、頭はキリンを用意出来なかったから怒られる・・・ということでいっぱいでした。

ですが、結果的にキリンは用意しなくて正解でした。
キリンがいない陸上競技場で、素晴らしい走高跳びを見せた竹下選手。その映像はとても未来にとって羽ばたいているような、そんな光景に僕は思えてきたからです。

武道館が終わってからがっくしきました。
とにかくボロ雑巾のようにフラフラになっていた記憶しかありません。
僕は一体何をしていたのだろうと思いました。

しかし興行後、坂井さんが「今成が作ったVTRが印象に残った。サカナクションのルーキーもよかった」というようなことを書いてくれて随分と救われた思いになったような気がしたことを覚えています。

とにかく塩っぱい記憶しかない2012年。
でも竹下はあの時のことを「めちゃくちゃいいVTR作ってくれましたよね」と数年後に言ってくれました。それもまた僕の塩っぱかった2012年の記憶を少し肯定させてくれるものでした。

それからというもの、竹下選手のVTRを頻繁に撮るようになりました。
棚橋弘至戦、さいたまスーパーアリーナ、遠藤哲哉戦、節目となるタイミングで彼のVTRを僕は作り続けていました。


竹下選手は10代の頃から自分がどうなっているべきか、どうなりたいのか、のイメージが強くあったと思います。プロレスラーになるために陸上競技を選択したり、全て「プロレスラーになるため」が基盤にあって。

彼が大学生になっても「プロレスラーとしどう還元するか、糧にするか」を前提に考え、行動していたように思えます。
その学生生活の間も彼は想像もしないような大きな犠牲を払ってきただろうし。
彼を取材しながら、早熟として生きることを選択した彼の決意と覚悟が毎度のように更新されていくのが分かりました。

そんな彼を見ていると、僕も不思議とジムに行かなくては・・・!という気持ちにいつかなっていきました。
導火線に火が付く感じなのかどうなのかは分からないけれども。彼のその姿勢を見ていると、俺もトレーニングをしなきゃ・・!と思えるようになってきた。

ただ傍観者として行っていた竹下幸之介のインタビューが、時に自分に跳ね返ってくるお告げのような感覚になることがいつしか生まれて行きました。

竹下幸之介と話をするととにかく面白いのです。
試合後はアドレナリンが沢山出ててアドレナリンがもったいないから、試合後でもトレーニングするとか、そんな話をよく聞くようになりました。いつのまにか僕もその言葉に触発されるようになりました。

2年前のガンバレクライマックス。トーナメント1回線で、僕は大家健に負けてしまいました。
その悔しさを抱えて、僕はジムに行き、その様子をinstgramにあげました。
竹下がコメントをしてくれました。



こうして僕は眠っていた自分の野生を段々と解き放っていくようになりました。
自分と10個も年が違う、竹下選手の言葉に触発されながら、塩っぱかった人生をリボーンさせようと、僕はそれからトレーニングの量を増やしていくことになっていきます。

僕は10代、20代の貴重な時間で、若さを武器にすることは出来なかった。言ってしまえばその時間で何かを残す事も出来なかったたし、もうとにかく塩っぱい思い出ばかり。

そういう意味では竹下幸之介という男とは人間として生きる軸となる幹の太さが違いすぎる。10代の頃から将来のために何か動けていて、そしてそれを糧に出来ている人間と、10代、20代の時間がとにかく塩っぱかった僕とは対比が凄まじいことになっている。
「若さ」に対して後悔することは沢山ある。あーしたらよかった、こーしたらよかったをいちいち挙げたらしょーがないが、全部自分が招いた出来事だから、今の僕は全部受け止めて生きている。そうしたことを積み重ねたらぽちゃじょが生まれていたということだ。

されど、最近の私は自分の幹が太くなってきているという自覚もある。図々しくも今、ぽっちゃり女子プロレスを主催している。

竹下選手は将来メジャーリーガーになるだろうし、彼のここから先のネクストフェーズの未来図を考えると対戦出来る機会がいつまでもあるとは限らないと思いました。

ぽちゃじょはガンバレプロレスから生まれたスピンオフではありますが、僕の精神性が形になっているものです。そしてそれが産まれたばかりの状態でもあります。

竹下選手は今、特殊性を相手に求めているフェーズに入ってきています。既に3度目のKO-D王座戴冠。新たな王者像として彼が築こうとしているのは自分を満たす相手との防衛戦、何より彼はアブノーマルな感触をプロレスに求め始めています。

そこで、アブノーマル。ぽっちゃりマエストロの今成夢人はいかがでしょうか?
という話になってきます。

ぜひ、このぽっちゃり女子プロレスというリングで、僕のアブノーマルな衝動の先に生まれたリングで、竹下選手の言葉、姿勢を見て、リボーンしはじめている自分と彼が戦うのは"今"しかないのではないかと僕は思いました。今を逃したら、きっと彼とは試合ができなくなってしまう。そんな予感がしました。

さらに今回、僕は彼のお母様である竹下恵子さんを招聘しました。
なぜか僕はいつのまにか恵子さんと仲がよくなっていました。
恵子さんはとにかくユーモアのある母ちゃんです。恵子さんのInstgramはどの選手のものよりも面白いのではないでしょうか。
その節々に息子を思う気持ちがダダ漏れています。その視点がとても微笑ましく、またどこか羨ましいものにも僕には見えます。

いつのまにか、恵子さんは僕にもそんな視点を向けてくれるようになりました。
先月の試合で脳震盪になったときも、恵子さんは心配して連絡をくれました。

よく「ぽっちゃり好きは母性を求めている」という言説がありますが、それが一体どこまで本当なのかよくわかりません。
実際のところ僕がどこまで人に母性を求めているのかも自分自身であまりよくわかっていません。

恵子さんが僕に向けてくれている視線に、僕はどう応えたらいいのか。
それは幸之介君と試合をするところを恵子さんに見てもらうことだと僕は思いました。
恵子さんの息子に影響を受けて、リボーンしようとしている男の姿を僕は恵子さんに見てもらいたいと思いました。


前回の大会で、30から自分の可能性を信じるようになったとマイクしました。そうは言ってもいいおっさんですから、厳密に言えば後はないわけです。

とは言え、やはり10個も下のアスリートがかけてくれた言葉に、自分が呼応して今がある。そんなことを自分のカラダで竹下幸之介とぶつかりたい。そして勝ちたい。今はそう思います。

ぽっちゃり女子プロレスのリングで、男子同士のシングルマッチ。
僕のわがまま、これも公私混同。公私混道なんです。

この試合で、2012年に抱いた感情も全て吐き出せるように、精一杯闘いたいと思います。

みなさん、是非この一戦を見にくてください!

チケット予約はyumehito.0922@gmail.com
までお気軽にご連絡ください!


ぽっちゃり女子プロレス「P2 トレインスポチャッティング」
2019年8月20日(火) 開場18:30 開始19:00
東京・新木場1stRING

■チケット
-前売り-
わがままシート(自由席)3,500円
※自由席
-当日-
わがままシート(自由席)4,000円