2004年2月 学校の食堂はただならぬ空気に包まれていた。
春の高校野球(選抜高校野球)の出場校発表の日であり、21世紀枠出場の候補となっていた学校に多くのマスコミが訪れ、食堂で待機していたからだ。
速球派T投手を擁し、秋季大会で強豪の日大三高をゼロ封した事と、40人の東大合格者を出す進学校であることから文武両道の模範として甲子園初出場の可能性は高かった。
ちょうどその日、長男は竸技界(スキージャンプ)初の全中東京都代表ということで校長室に呼ばれていた。
結果は落選‥ 岩手の県立一関一高が、21世紀枠に選ばれた。
理由は「進学校というなら一関一高も同じ。しかも公立である」
正直言って「進学校」の基準がずいぶん違うなあと感じた。
「潮が引く」とはまさにそのことで、詰めかけていたマスコミがあっという間にいなくなった。
長男は、落胆隠せない校長に「せめて君は大暴れしてくれ」と激励されたそうだ。まあ野球だけがスポーツじゃないし(サッカーではインターハイに出場している)、我が子も含めて十分頑張ってると思うが。
野球部の監督が世代交代し、この頃から野球部の方向性が変わってきた。
「甲子園をめざすのはやめよう。東大に入って野球をやろう」
そもそもクラブ活動の目標というのは生徒たちが作っていくもので、上からの目標提示には賛否両論があったと思う。
しかし、現に同級生のNや、甲子園出場を果たした都立国立のI投手は実践しているわけで進学校特有の目標づけでもあった。
2013、14シーズン目標は現実になる。
当時、六大学リーグで歴史的連敗記録を重ねていた東大だったが、主将、副主将に桐朋の卒業生が就任し、レギュラーのうち4人が桐朋卒だった。(この年のスキー部主将も桐朋卒)
湘南高校出身の宮台康平投手(東大→日ハム→ヤクルト)を擁し、東大は単独最下位を脱した。
多分に昔話が長かったが、言いたかったのはここにある。
部活を全面的に外部コーチに任せた時。このような競争原理とは別のチームとしてのダイナミズムが生まれるだろうか?
また、
高校生達の活動意欲や世界での活躍が、大人の都合の合理化でうまく育てていく事はできないのではないか?
冒頭の森井選手のインタビューで感心したのは、「チームのみんなの目標と自分自身の目標をどう棲み分けられるか」という事。
こういった事を考えなくてはいけない今の世がちょっと可哀想な気がするけど、スポーツの世界だけではなく、これが考える力なんだろうと思う。
まずは西東京大会、みんな頑張れ!