毎年、3月に入って最後の冬将軍がやって来る。

 3月2日は、45年前、北海道大学への進学を夢見て札幌へ飛び立った日だ。

 高校時代から、雪国で人生を過ごすのが夢だった。

 大学生活、恋愛、仕事‥

 当時、大学で明治近代史を勉強したいと思っていたので、明治時代から日本史に加わった北海道、スペシャリストの教授がいる北海道大学はまさに目標となった。

 今から考えると、家から独立したかっただけかもしれないけど。

 

 東京を立つ日、真っ青な空が広がり、大いに奮い立った。

 まさに「試される大地」だ。試されるのは自分‥

 意気揚々と飛び立ち、飛行機で大きな壁が立ちはだかった。

 新千歳空港上空で飛行機は何度も旋回した。

 東京は晴天。

 しかし冬型の気圧配置では、北海道は吹雪となっていた。

 飛行機は着陸を諦め、羽田に引き返した。

 ところが羽田では給油を行い、客は降りる事ができなかった。受験生がいたからだ。

 羽田から新千歳へ向かう時の夕陽の富士が忘れられない。

 

 新千歳空港に降りたのが、深夜11:30。宿に着いたのは1:00。さらに、他の客に迷惑になるから、と部屋には入れず宴会場でザコ寝だった。布団に入れたのは試験当日の午前2時だった。

 

 結果は「ツガルカイキョウ ナミタカシ」

 不合格の原因は、このトラブルではない事は自分でもわかっていた。でも、不合格の逃げ道にはなった。

 

 結局、家から自転車で通える大学に進学した。しかも、近代史とは正反対の考古学にのめり込んだ。もう、北海道には縁がなかった、と思うようになった。

 

 それが30年後に教員免許更新という国の愚策で、東京から北大に通う機会を得た。思えば叶う‥。

 そして年に40日は北海道にいる。思えば叶う‥。

 

 大学受験は失敗であり、挫折の経験だったけれど、新しい人生を与えてくれた。

 北海道へ引っ越したいけど、除雪が大変だなあ。