7月21日、突然声が出なくなりました。
喋る声も全く出ません。
熱はなく少しだけ咳が出ました。
病院で診てもらったところ、診断は「風邪」
熱帯夜が何日も続いていたある夜、私はエアコンをオートにしたまま、
誤ってタイマーもつけずに眠ってしまいました。
完全なる私のミスです。
歌い手として失格です
私がプロデュースしている本番が8月27日。
そのための積み重なるレッスン、毎週末の稽古。
声帯が炎症を起こした時は本来絶対安静、つまり「沈黙」です。
でも私は休みませんでした。
「声はあまり出さないようにしよう!」と思っていましたが、
稽古に熱が入るとそうもいきません。
「結節」や「ポリープ」が出来ていたわけではない事も、少し私を油断させてしまいました。
でも「風邪は万病の元」
ただの「声帯炎」がこれからどんどん悪化していったのです。
病院に通いながら、薬を飲み続けながら、吸入をしながら頑張り続けました。
咳は2,3日で収まりましたが、声は相変わらず出ません
まるで声帯に蓋をして南京錠で鍵をかけてしまったかのようでした
コンサート出演者に心配をかけたくない、気を遣わせたらいけないと言う思いから辛さは微塵も出さず稽古やレッスンをしていましたが、
全くよくならない症状への焦りと、このまま歌えなくなってしまうのではないかと言う恐怖で体が震え、眠れなくなることもありました。
いつもお世話になっている耳鼻咽喉科の先生以外にも、劇団時代に診てもらっていた音声専門の病院も行きましたが、診療所の場所が変わっただけでなく、先生も変わっていました。
そこで受けた診察は正直言って酷いものでした
「風邪でいいんじゃないの?」
「ああ、声帯浮腫んでるからね、出るわけないね!」
2回目に訪れた時も、
「声帯まだ浮腫んでるから、そりゃ出ないだろうね、でもそろそろ歌ってみたらいいんじゃないの?でないとあなたノイローゼになっちゃうでしょ?」
と言われました。
でも当然、歌っても声は掠れて出ません
処方された薬もと言う感じだったのですが、一刻も早く治したかった私は信じて飲み続けたし、頂いた吸入液も必死で吸い込んでました。
でも長年の女優やボイストレーナーとしての経験と、様々な書物やネットの情報から、「果たしてこの薬で本当にいいのだろうか」と言う疑問がどんどん膨らみ、別の音声の先生を訪れました。
そうしたら、「この薬を吸入し続けたら、声帯は痩せてどんどん出なくなっちゃうよ」と、今日言われました。
・・・・やっぱり
他にも症状が全くない、つまり必要のない薬を大量に飲んでいたのです。
どうしたって過去は取り戻せません。
だから今まで飲んでしまった薬も、過ぎてしまった時間もやり直すことは出来ません。
だから前を向くしかありません。
「声を失う」ことは、私たち声を生業としている者にとって死活問題であり、精神もやられます。
「絶対に治す」
「本番はちゃんと歌う」
と強く思い続けて、絶対に諦めないと心に決めていましたが、
胃や頭や胸がしくしくと痛む日々でした。
昨年から食事療法を始め、痩せて体調はすこぶる良かったし、
夢だった地元での「虹の橋を渡ったバブ」の再演も決まり、
生徒たちとのコンサートに意気揚々と全身全霊で臨んでいた時に、
思いがけず襲われた声帯のトラブル。
一向に良くならない自分の喉と、日に日に迫って来る本番。
「練習したい」
「歌いたい」
でもそれは出来ないので、無言で楽譜や台本を見つめ続けました。
そして今、やっと少しだけ声が戻ってきました。
舞台制作はほぼ終わったので、今週は全てのレッスンをお休みさせてもらったのです。
声を失ってから丸一か月です。
低音~中音域は出るようになり、チェンジボイスから高音域はまだひっかかるので、上手く出せません。
あと一週間でどれだけ戻るでしょうか
正直怖いです
年間300ステージの舞台に立っていた時も、
一週間に20名以上のレッスンをした時も、
声をこれほど壊したことはありませんでした。
この年にして初体験です。
嬉しくない初体験です
「人生は何が起こるかわからない」
本当ですね。
きっとこの体験には何か意味があるんだと思います。
まだ治りきってないし、不安が完全に無くなったわけではありません。
でも、後々きっと何か学ぶ事や変化が、私に訪れるに違いないと、そう思うのです。
今までずっとそうだったから。
辛い経験はただ辛さを味わうためだけに来るのではないと信じます。
大量に手元にある薬と病院の領収書を見て、
「健康」に勝る宝はないな・・・・とつくづく思います。
「病院へ行くな」と言うのではなく、
いい先生に出会い、適切な処置をしてもらい、
そして短い診療時間でも、心がふと穏やかになって、
前向きになれたらそれがベストだと思うのです。
いつもお世話になっている先生と、
今日診て頂いた先生はとても信頼しています。
でもセカンドオピニオンを受けた先生は、
上から目線で高圧的で、少なくとも私は全く信用できないし、
二度と訪れる気はありません。
何故あそこが有名病院なんだろう
この経験が、自分自身に何かの気づきや学びをもたらしてくれる事を信じて、辛い事ばかりに思いを馳せずに、前を向こうと思います。
そして楽しいコンサートを絶対に成功させたい