子役産業 | 荒川久美江オフィシャルブログ「夢人~ゆめびと日記」

荒川久美江オフィシャルブログ「夢人~ゆめびと日記」

元劇団四季女優、ボイストレーナー、婚活カウンセラー。
結婚相談所「Chez L'amour~シェラムール」代表。
「クミエ・アラカワミュージカルClass」主宰。


いくつになっても夢を忘れない!
夢は叶えるもの!

感謝を忘れず笑顔で生きていきます。

今まで沢山の子役さんたちを指導してきました。
歌を初めて習う子、オーディション直前にやってくる子、既に舞台で活躍している子など様々です。
子役で活躍できる期間は限られているから、みんな次から次とオーディションを受けます。
合格すると稽古に入り、同じ志を持ったお友達に出会い、大人たちと共に舞台を作り上げていく。それはとても楽しくて有意義でやり甲斐のある日々だと思います。
そして本番を迎えれば、心は高揚し、やり遂げたあとの達成感や満足感は計り知れないものがあることでしょう。



でも大事なのはそのあとです。




女子も男子ほどで明確ではないですが、変声期があります。
男子は話声位がほぼ一オクターブくらい下がるのに対して、女子はせいぜい2~3度くらいです。
声の変化には性ホルモンが大きく関わっているので、いわゆるこの「思春期」と呼ばれる時期は体の変化とともに声も変わっていくのです。でも「変声期」だからと言って、普通に生活している分にはあまり気にすることはありません。放置していても声は自然に安定していくので大丈夫です。
でもミュージカルの子役で活動してきた子は別です。
日本のこどもミュージカルは、地声信仰が根強くあって、2点DかE位まで地声を出させます。
女声でその音域まで地声を張るのは中々大変なことですが、骨格や筋肉がまだふにゃふにゃで支えられない小さな体では、しっかりとした支えを必要とする頭声を美しく響かせるのは不可能です。
舞台は限られた期間内で仕上げなければならず、ひとりひとりの発声を見てあげる時間などありません。なので、手っ取り早く地声を出させます。
「もっと大きな声を出して!」「もっと声を前に飛ばして!」と言う言い方をされます。
でも体の使い方、呼吸の方向性、喉の開放など全く知らずに、がむしゃらに出す地声は、ほとんと喉を前面に押しまくった痛々しい地声です。
声帯は頑張り屋さんで、多少無理を続けていてもしばらくはもちます。無茶苦茶な発声をしていても、結構出てしまうんですね、これが・・・。逆にそれが困るのです(-.-;)

でもそう長続きはしません。
ある日突然、声が枯れたり、咳が出たり、痰が絡んだりしてきます。
無茶な発声で声帯自身が疲労したり、酷使から来る乾燥などでそういう症状が現れるのです。
風邪も引いていないのに、そういう症状が長く続いたら、一度耳鼻咽喉科で声帯を診てもらってください。そのまま使い続けて取り返しのつかない事になってしまうこともありますので。


小さい頃から活躍してきた子は、自分特有の声の出し方が身についています。
子役としてはそれで済んでいたものも、体が徐々に大人に変化していくと、今までと同じような出し方では済まなくなってきます。
この時期はホルモンの影響による自律神経系もかなり変動して不安定になるため喉頭の充血や、分泌過多など軽い炎症状態に似た現象も起こるので、無理な発声や、酷使は命取りにもなりかねません。
なので、体や声域の変化に見合った発声を身につけていく必要があるのです。
体が変化していっているのに、子役時代の発声を続けるのはもう無理なのです。
それなのに、楽しかった稽古や舞台や感動が忘れられず、自分の体や発声にきちんと目を向けず、変声期が訪れているにも関わらず、子役時代の発声のまま声を出し続けたらどうなるのでしょうね?


子役で活躍するのは楽しいし嬉しいし華やかで素晴らしいことだと思います。
私も生徒たちが舞台の上でキラキラと輝く姿を沢山観てきて、誇り高かったし、嬉しかったです。
でも、ある程度活躍したらもういいんじゃないのかなって思います。
心も体も子供から大人に変わっていくこの大切な時期は、無理をせず、しっかりじっくり発声に向き合ったらどうでしょうか?
もう子役で舞台活動も歌も芝居もお終い!!!って決めているなら多少無理をしてもいいと思います。でも大人になっても歌えるミュージカル女優として活動していきたいなら、一旦、現場を離れることをお勧めします。


子役を長く続けてきた子の姿勢には必ず共通点があります。

背中が曲がり首や顎が前に突き出ています。

二点DやEなどの女性が地声で出すには限界に近い高音を地声で押し出してきたからです。

喉の奥が平たくなって気道が狭くなっています。

そして無理な発声や姿勢の悪さから骨盤隔膜も腹筋も、もちろん背筋も育っていないので、ボディで音程を保つことが出来ず大抵♭しています。

私が見て来た子役さんの90%はそうでした。

断言します、そのままの姿勢では頭声は出ないし、声は下から上までつながりません。

姿勢を見直し、気道を確保し、それを支えられる筋力アップをしなければいけません。

 

 

「子役は安く使えるから」とある芸能事務所の偉い方が言っていました。

それを聞いた時「何だかな~(-""-;)」と思いましたが、それが真実なんでしょうね。

子役産業大繁盛ですものね。



目先の栄光を追い求めるのか、大人になってからの長い将来を見据えるのか、それはもう親御さんと本人の考え方次第ですね。

ただ、基礎訓練もやらずに自然といい声が出るようになるとか、歌が上手くなるというのは絶対にないのだけは確かです。

 

 

 

人生そんなに甘くはないです。

オーディションに躍起になっている時は気づかなくても、いつか必ず実感する時が来ます。

 

 

 

色々思うことあって書いてみました。