今日は先日熱帯雨林さんから届いたかなんさんの期待の新刊をε(*・ω・*)3






【商品名】妄想少年観測少女3

      (電撃コミックス)

【著】大月 悠祐子

【発行】アスキーワークス

【値段】\599(税込)





妄想少年観測少女2感想 は←こちらから





前回も書きましたが、私は大月氏の以前のPNの「かなん」という名前のほうが呼びなれているので、これからもかなん氏と呼び続けます(*^_^*)







作品



作品は相変わらずのオムニバス形式。

少年視点+少女視点で描かれる2話構成でひとつのお話として成り立っています。

そして、もうひとつの特徴として、それぞれの話の中に主人公(ヒロイン)のフェチズムが織り交ざっています。



今までの作品では、テーマ(フェチ)が「女装」「眼鏡」「指」「髪」「肌」など、どちらかというと対象がカタチとしてはっきりしているものでしたが今回の作品は

「眼差し」「水に濡れた肢体」「他人の恋愛模様」など少し抽象的な感じがしました。




今回の作品は

「華宮沙夜」+「加藤満」

「小泉翔平」+「華宮玲」

「恋愛観測」

の5作品でした。













「華宮沙夜」と「加藤満」の二人は名家の2人。


将来を約束されたふたりには

古いならわしがありそれは嫁となる沙夜に婿となる満が水をかけるという「清めの儀式」を3年に1度行うということ。

その儀式の為だけに、満は田舎の町に帰ってきます。




今回は和物できたか…というのが表紙を見たときの感想(笑)

沙夜が常時着物を着用していますからね。


個人的には、満の気持ちが「男」でかっこよく思えました。


今までの作品の中で一番大人っぽい気がします。


それは、恋愛をこなしているからとか今まで何人もの女の子と関係を持ったから、とかっていう表面上の理由ではなくてむしろそれすらも緻密に組まれた純粋さの裏返しであったから。



(1巻で登場した和貴もクールを装っていますが、大人っぽいとは少し違う気がしたんだよなぁ…。)




14歳の儀式のときに今までまったく儀式中は目立った反応を見せなかった沙夜に対して、

満は着物の裾をめくろうとする。

そこで、沙夜は初めて女の子らしい仕草(裾を必死で押さえようとする)を満に対してみせる訳ですが

その時に一気に心を持っていかれたんでしょう。


その後、水をかぶった沙夜に

「その姿はオレの脳裏に焼きついた」と。





沙夜は

心の内側に秘めた劣情=「あくりょう」と捕らえていて、

それが満を求める…とあります。




この14歳の儀式のときは同じシーンが二人の視点からそれぞれ描かれていますが

幼少期より満に惹かれていた沙夜はこのシーンで自分から着物を脱ぎ捨てるような妄想をしています。



それまでどちらかというと淡白な印象だった沙夜の印象がここで一気にとても年相応らしい女の子に感じました。




最後、17歳の儀式のシーンは本当にページをめくるのが惜しいくらいどきどきしてしまいました。。















「小泉翔平」と「華宮玲」



玲は満に惹かれていた沙夜の妹。



翔平視点の最初の話は、いきなりぽつんと現れた翔平に勝ち目なんかなさそうに見えていたんですがちゃんと最後に心を奪っていましたね。



ドスの利いた目で玲ににらまれて喜びを感じてしまう彼は最初はMなのかと思いましたが(笑)



「目は口以上にそいつの中身をダダ漏れにさせる」っていうのが彼の考え方なのでまぁきちんとそれを含めて考えるとMではないんですがねぇ。




また、満と玲が話をしている所に翔平が遭遇するシーンで


「華宮玲の“目”は今、加藤のものだ」というシーンは、深い嫉妬と同じくして、翔平が“目”にこだわるのを印象付けるシーンでもありました。





その後

「なんなの なんで私に かまうの……」

「あんたのことが知りたい もっともっと知りたい そのタメの努力ならオレは__…」

「……そんな努力、あんたが今までしてきた事も これからしようとしている事も なんの意味もなさないわ

 全部…無駄よ」


との会話は最後のシーンで全部ひっくり返り、きちんと努力が実っていましたね。



というのも。

諸事情で満を殺そうとする玲に加担する翔平ですが、

ちょっとした上辺だけの理由で、満に対する玲の恋心が消えているはずもないとわかっている翔平はしっかりとその恋心を逆手に利用して満に向かっていた玲の視線を自分に向けることに成功させています。


実は意外と策士な翔平でしたね。。





また、この二人のお話に関しては扉絵も意味深いものとなっており


翔平視点のお話のときの扉絵では、翔平一人が巻き取られたフィルムと一緒に座っていて、背景に玲のいろんな表情やら仕草が写っていました

これはつまり、その「目」でみた玲のたくさんの表情を捉えている=物語最初から玲に惚れていることを示唆しているしように思いました。




対する玲視点のときの扉絵では後ろから玲が翔平に抱きしめられていて、お互いの「目」は玲の手で隠れてしまっています。

そして背景も少なく、涙をこぼしている二つの目が描かれているだけ。


それは満に対する失恋というのが見て取れるし、逆に二人の表情が分からないのはこれからの二人の未来がどちらへいくのか分からない、というものを感じました。












「恋愛観測」は大地花という名の少女が、1巻で登場したキャラクタのその後を追いかけたもの。

花自身はいまだ恋愛というものには縁がなくて、恋に恋する女の子。




単行本の帯には「この物語は、3巻から読むのが面白い」というフレーズがありますが、このフレーズの意味が分かるのがこの「恋愛観測」の物語。



花を通して、1巻のキャラクタを追いかけますが

1巻で登場した子達がさらに官能的に描かれています。




花の趣味は他人の恋愛を観測するのが趣味。

その為か、他人の恋に敏感。


今まで登場した子達の変化をきちんと捕らえています。





そしてもうひとつこのお話で分かるのは


「人は恋をすると、おかしく、なる____」


という、「妄想少年観測少女」全体を通してのこのフレーズを如実に現しているのだと思いました。

上記のフレーズは1巻の頃から帯や内表紙に書かれているこの作品のテーマともいえるフレーズです。



それを現しているかのように

今までの作品に登場したキャラクタ、みんなどこかしら可笑しくなっている。


それをそれぞれ必死に隠そうとしているのだけれど

(たとえばはるか×和貴はその関係そのものを、まゆ×祐は二人だけのアトリエ作品を、鈴木×山田は恋心を)

みんな、その気持ちは隠しきれなくなっていて日常に溢れてしまっている、というのが見て取れました。



つまりはそれほど、恋は人を可笑しくさせるということを現していて。それをしっかりと官能的に描いてくれた気がします。






最後に、花にももしかしたら、という運命の出会いのようなシークエンスが描かれていました。


3巻で終わりかとも思っていましたが、4巻もあるようなので今からとても楽しみです(*^_^*)