「お母ちゃんいいところ行くんやろ?」



病室に行くと母が言ってきた
ドキッとした

術後、頭の創部も落ち着いている
頭の形もとてもキレイ
日によって、険しい顔をして精神的に不安定なときもある
でも、薬の副作用で両手の震えはあるが字も書けるし、食事も自分で食べる


反面

元々、人に凄く気を遣う性格
必要以上に気を遣うので、相手にとっては負担に感じとられてしまうときもある


ヘルパーさんにケアしてもらった後も「迷惑かける。自分で出来ない。嫌われてないか」と塞ぎ込む
そして、その不安は精神疾患をもつ母にとっては負担となる


病院は治療するところ、と理解している母
忙しく働くスタッフを見て、「自分だけ何もしないでみんなに悪い」となる

このところ
そういう言葉が増えてきた
そこで
私は
施設に行く話をすすめている、と説明しようと思っていた

申し込んだ施設は
花や野菜を育て、収穫し自分達で料理をしたり
字を書いたり
工作をしたり
歌の教室
遠足
家族との遠足や外出
園児たちとの交流
色んなことに取り組んでいる
母もきっと穏やかに過ごせるだろうと思い
その施設を選んだ


施設入所が決定するまでは、母には言わないつもりだった
でも、その当時の母の様子を見ていたら
もう少し日常的な場所で過ごしたい、と思い始めてるんやな、と思った


母は、なんとなく感じていたようだった

説明しようと私が病室に入ると
「お母ちゃんいいところに行くんやろ?」
と聞いてきた

不安なんかな?
嫌がるやろな
と思っていたら

「嬉しいよぅ」と言った
本当に嬉しそうだった

でも、それには理由があった
勤務先に入院していることで
私がスタッフに気を遣っている姿を見て
「頑張らないと。これ以上娘に迷惑をかけられない」と思っていたようだ
日記に書いていた

スタッフに気を遣っている私の姿を見るのが辛かったんだと思う
そういう姿を見せないように努力をしていたのに…自分が情けない

私の自宅で…とも考えた
色んなことをクリアしないといけない

それに
私の自宅で生活することに
母は自信がないようだった
私の夫は優しい人
母のことも大事に思ってくれている
だからこそ余計に迷惑をかけたくなかったようだった


その日から
母は、施設に入る日を心待ちにしていた




私の心は複雑だったけど
その先へ
進まなければ…と自分に言い聞かせていた