彼は


跳ねるように歩いてきて
 
 
そして

大きな荷物を抱えて挨拶をしたわたしを
ちらっと見ると

手伝おうか?と言ってその荷物を持って職員室に後戻りしてくれました。
 
 
そのあと
 
言葉を交わしたはずなのに何も思い出せませんでした。
 
彼はあの時あんなに輝いて笑っていたのに
 
なぜ人はあんなに変わってしまうのか
 
 
今思ってもとてもつらい
 
何度も思うことですが

 
時が止まれば彼は死ななくて済んだのかもしれません。



もう
来年の体育祭しか会える機会はないのかも。
と、諦めかけていたある日


私は美術の教師に頼まれてみんなが提出した作品を職員室に運んでいました。
 

職員室のある校舎は歴史的建造物でアップダウンも激しいため
ど近眼のわたしはメガネをかけてみんなの作品を職員室に運びました。


落とさないように
慎重に慎重に…。


職員室の校舎はいつも薄暗く
でもなぜか、寒い時は暖かく感じ
その時のように梅雨明けの蒸し暑い時はひんやり感じる不思議な建物


その日もわたしは入った瞬間に包まれたひんやり感を心地よく受け止めていました。


でも


いつも薄暗い廊下の向こうが
なぜか明るく光っているように感じて目を凝らすと

そこに
彼がいました



体育祭が終わり
 
一週間経っても
一ヶ月経っても
 
私が彼に偶然出会うことはありませんでした。
 
 
それだけ
大きな学校だったと言えるでしょう。
 
 
上級生は、はるかに大きく大人びていましたので
怖くて上級生の校舎に立ち入ることなどできません。


クラブ活動をしていない私は放課後にグラウンドで彼を探すこともできません。
 
 
でも
今ならもしかしたらすれ違うくらいはあったのかな?
とも思います。

なぜなら
私はど近眼だというのに
授業時間以外はメガネをはずしていたから…。  
すれ違っても見えてなかったと思うのです。
  
 
出会った時にメガネをかけた顔を見られたくない。
 
そんなことを思うほど
彼に憧れる気持ちは日増しに強くなっていました。